模試で実力を出せない子の共通点は、親からの過度なプレッシャー

 さて、ここまで入試本番のメンタルケアについて紹介をしてきました。本番で緊張してしまうというのは、大人でもあることですから、ある意味、仕方がないことで、それを乗り越えていくことも大事な経験かもしれません。

 「ただ、ここで一つ気をつけてほしいことがあります」と安浪先生。

 「それは、小学生の子どもというのは、大人が思っている以上にメンタルが弱いという点です」

 「よく塾の授業は理解できているのに、模試で結果が出せないという子がいます。学力がないわけではないのに、結果につなげられないのは、親からすると歯がゆいですよね。でも、実はその親御さんの見えないプレッシャーが、お子さんの力を妨げてしまっていることもあるのです」

 「例えば組分けテストで『次のテストでクラスが上がらないと、志望校に行くのが難しくなるわよ」なんて言ってしまったことはありませんか? 『また計算ミス! まったくもう~!』などと叱ってはいませんか? こうした親御さんの何気ないひと言が子どもにプレッシャーを与え、自信を失わせているのです」

 「授業は理解できているのに、模試で結果が出せない子というのは、学力の問題ではなく、過度のプレッシャーなどによるメンタル起因、前夜に勉強を詰め込み過ぎて睡眠不足などの体力起因などが問題だということを親御さんには知ってほしいと思います。模試で結果が出せない子は、本番でも結果が出しにくい。中学受験は親の期待が大きいため、親本人は意識していなくても、子どもにプレッシャーを与えてしまいがちです。でも、お子さんが本当に望んでいるのは親御さんの笑顔であって、叱咤激励ではないのです」

 「中学受験でお子さんの実力を発揮させるには、お子さんが気持ち良く勉強できる雰囲気づくりをしてあげることです。できないことばかりに目を向けるのではなく、できているところに目を向け、『こんな問題が解けるなんてすごいね』『この調子でいこう』と常に前向きな声かけをしてあげてください。そうした積み重ねが自信を与え、『どんなに緊張しても私なら大丈夫』と思って、本番でも力が発揮できるようになるのです」

(撮影/鈴木愛子)