【問題文を読まない】類似題をくり返し演習させることで陥る早とちり

 「テストで点が取れない子に最も多いのが、『問題文をよく読まずに解こうとする子』です。そういう子は、塾のテキストや市販の問題集に入っている典型問題は解けるのに、ほんの少し条件が変化し、要求されている結論をずらされると、見事に間違えてしまうのです」

 「問題をしっかり読まないうちに解き始める子というのは、例外なく多くの演習問題をこなしています。そうさせているのは、塾が原因でもあるのです。例えば、難関校に強いと言われているSAPIXは、その週に学習する内容を1冊にまとめたテキストを使って授業を進めていきます。授業で使うテキストの裏面には家庭でやる宿題が載っているのですが、その問題文は授業で習った問題の数字を変えているだけ。問題文をしっかり読もうとする意欲が高まりません」

 「類似問題をくり返し解くことで解き方や考え方を身に付けるという方法は間違ってはいないのですが、そういう宿題に慣れてしまうと、問題を1行読んだだけで、『あ、これはあのやり方だ』と思い込んでしまい、問題文を最後まで読まずに解き始めてしまう危険性があります。そういう子は、問題をしっかり読むトレーニングをしなければなりません」

 「こういう子におすすめの対策は音読です。音読は一語一語読まなくてはならないので、読み落としを防ぐことができるからです。問題の読み落としが多い子は、家庭学習でテキストを音読する習慣をつけさせましょう。実際のテストでは音読はできませんから。最終目標は音読をするように黙読をすることです。それが習慣づくと、問題文を読み飛ばすことが防げます」

 それともう一つ、西村先生は問題を解くときの“向き合い方”についてこうアドバイスをします。

 「勉強には、スピーディーな学習とスローな学習の2種類があります。スピーディーな学習は算数の計算、国語の漢字や語句、理科・社会の暗記など、くり返し学習することで覚えるものです。一方、スローな学習は、算数なら計算問題以外すべて、国語なら読解力、理科・社会なら説明文を読んで全体のイメージをつかむ、といったことが挙げられます」

 「中学受験の勉強では、スピーディーな学習とスローな学習の両方をバランスよく取り入れることが大切です。大手進学塾の場合、中学受験に向けた3年間の学習カリキュラムがきっちりと決められていて、日能研を除くほとんどの塾では、5年生までに中学受験に必要な範囲を終わらせます。4年生ではその基礎を学習するため、公式や知識を暗記するスピーディーな学習が中心になります。こうした授業に慣れた子どもたちが、5年生になって登場する発展問題や応用問題を同じように解こうとしても、正解を導くことはできません。なぜならこれらの問題は、『なぜそうなのか』を理解していなければ解けない問題だからです。つまり、スローな学習で理解を深めていかなければならないのです」

 「入試ではこれらの問題がミックスされて出題されます。そのため、取り組む問題ごとに、今はどの学習の問題なのかを意識して取り組むことが大切です。例えば計算問題なら、『正確に』『スピーディーに』解くことが求められます。一方、考える問題はきちんと『理解し』『納得する』ことが求められます。それなのに、時間を気にせずにダラダラと計算問題に取り組んでいたり、問題文を読みじっくり考えるべき問題で、読み飛ばしや思い込みで解いたりしていては、テストで点を伸ばすことはできません。テストに取り組むときはもちろん、家庭学習をするときでも、取り組む問題ごとに『これは覚える問題だ』『これはじっくり考える問題だ』と意識して取り組むようにしましょう