ひとくちに“中学受験”といっても、首都圏と関西ではその中身が大きく違うことを知っていますか? 本連載ではこれまで、首都圏の中学受験について詳しく解説をしてきましたが、今後は関西の中学受験情報も発信していきたいと思っています。そこで、今回はまず首都圏と関西の中学受験の違いについて、首都圏・関西の大手進学塾で講師経験があり、現在は中学受験専門の家庭教師として活躍されている安浪京子先生に教えてもらいました。

何がなんでも第一志望にこだわる関西、第三志望までならOKの首都圏

「中学受験は、関西のほうがより厳しい戦いになるのです」(中学受験専門・家庭教師、安浪京子さん)
「中学受験は、関西のほうがより厳しい戦いになるのです」(中学受験専門・家庭教師、安浪京子さん)

 首都圏の中学受験は、1月の千葉・埼玉入試から始まり、2月1~3日をピークに東京・神奈川入試が行われ、5日くらいには幕を閉じるという流れになっています。受験生の平均受験校は、本番前の“お試し受験”を含め、約4~6校。多くの場合、2月1~3日のいずれかが本命受験日となるため、第一志望に合格できればそこで終了。万が一、不合格だった場合は、第二、第三以降の志望校の合格を取るまで続けるというのがよくあるパターンです。

 一方、関西は受験日が早く、毎年1月中旬の土曜日に、大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山の2府3県で同一に入試がスタート。そして、その日から3日間でほとんどの学校の入試が終了します。

 「つまり、関西のほうがより厳しい戦いになるのです」

 そう話すのは、首都圏・関西のどちらの中学受験にも詳しい安浪京子先生です。

 「“中学受験”といっても、首都圏と関西では状況が全く違います。まず違うのは受験できる学校の数です。首都圏には男女御三家をはじめとする難関校をはじめ、早慶MARCHの大学付属校、渋谷幕張・渋谷渋谷などの新しい進学校などいくつも名門校があります。また、中堅校以下でもユニークな取り組みをしている学校もあり、バラエティーに富んでいます。つまり、家庭の価値観によって、多種多彩な受験ができるということです」

 「一方、関西は全国でもトップレベルの学力を誇る名門校の灘を筆頭に、他の学校には厳然とした序列ができています。同偏差値帯に複数の学校が存在しないのです。首都圏であれば4~6校受験した中で、第三志望校くらいまでに行けたら、まあ“良し”とすることができますが、関西の場合は第一志望校がほぼすべて。『そこがダメなら公立中へ』という家庭も少なくありません」

 「受験日の設定にも特徴があります。首都圏で行われる中学入試は、どんなに長くても1日で終了しますが、灘をはじめとする関西の難関校は、一つの学校の入試が2日間にわたるケースもあります。例えば灘なら、初日が算国理の3科目、2日目にもう一度算国の2科目のテストが実施されます。つまり、その分、他の学校を受験するチャンスが減ります。けれど、そもそも関西の家庭では第一志望校に対する本気度が違いますから、問題はないのです」