前編「22年度中学入試を分析 パターン学習からの脱却が必要」では大きな出題傾向についてお伝えしました。後編では、中学受験プロ家庭教師集団「名門指導会」と中学受験専門のプロ個別指導教室「SS-1」の先生たちに、国語、算数、理科、社会の教科の入試を分析してもらいました。そこからどんなことが見えてきたのでしょうか?

【国語】立場が違う人を知ろうとする姿勢

 「近年、難関校の国語入試では、自分とは違う立場や環境に置かれている人が主人公の物語を読ませるといった、他者理解を見る問題が増えています。今年は開成中ではこども食堂を、麻布中では震災をテーマにした物語が出題されました。また、今年度の入試のトレンドとして、詩や短歌を出す学校が多く見られました。こうした問題を出す学校の意図として、子ども達にはよく分からないなじみのないものに対し、自分なりにどう向き合い、どう考えるかを問うているように感じました」と小川大介さん。

 それがよく分かるものとして、記述問題の変化があります。

 「数年前の国語の記述問題では、文中から正しい答えを抜き出してまとめるものが多かったのですが、今年は正確さよりも、自分なりの考えを書かせる学校が増えました。貧困問題や災害被害などは、実際に経験してみなければ、本当のことは分かりません。でも、分からないなりにも知ろうとする姿勢、自分なりに考えてみようという気持ちを持つことの大切さを伝えているように感じました」

 「こうした姿勢は、ある日突然身に付くものではありません。日ごろから世の中のことや社会に関心を持ち、自分と向き合う習慣が付いていなければ、難しいでしょう。そういう点においては、家庭の会話がとても重要になってきます。日ごろから『あなたはどう思う?』とお互いの意見を言い合える家庭環境を意識できるといいですね。こうした日々の蓄積が考える力を育みます」