中学受験では算数が重要と言われており、年々思考力が必要となる問題が多く出題される傾向にあります。2022年度の難関校の算数入試から見えてきた受験に必要な思考力はどのようなもので、どんな学習が必要になるのでしょうか。算数の解法について多くの著書を持ち、大手進学塾で算数指導をしている五本毛眼鏡さんは「思考力は、ただのひらめきではありません。これまでの知識の積み重ねの上にあるものです」と話します。詳しく紹介します。

状況を把握し、ポイントに気づけるかどうかがカギ

 「2022年度の難関校の算数入試では、時計算的な問題を出す学校が多く見られました。時計の長針と短針の動きを求める時計算そのものを出す学校もあれば、開成中のように一見、時計算の問題のように見せて、よく読むと旅人算のダイヤグラムで解けると気づかせる問題、渋谷幕張中のように時間差で火をともした長さの違う3種類のろうそくの燃え方について、グラフを参考にしながら考えて答えを出すといった問題など、2つないし3つのものの動きを見比べて考えていく問題が目立ちました」

 「驚いたのは、これまで必ずと言っていいほど立体の切断の問題を1次試験で出していた聖光中がそれを外して、2点の移動を考える問題、さらにはそれとはまた別に図形の移動(2つの直線や2つの正方形が移動する)の問題を出したことです」と五本毛さんは言います。

 こうした問題が増えた背景と解法のためのポイントを、五本毛さんはこう解説します。

 「2者ないし、3者の動きを見比べて考えていく問題というのは、問題の設定によって取るべき対応が変わってきます。出題側の意図としては、よくある問題、典型題性が薄められるというのが大きいと思います。つまり、問題を解くポイントを位置関係、速さ、動く方向といった状況の変化に応じてつかむ必要があります。なぜその解法を使うのか理解せずに類型問題を丸暗記学習するだけでは、その状況変化を能動的につかんで適切な解法につなげることは難しいです」

 また、渋谷教育学園渋谷中と市川中では下記のような問題が出題されました。細かい設定は異なりますが、両校ともA~Iに0~9の数字を入れて合計を2022にするという設定で、A~Iに入る数を絞っていく問題です。

 こうした問題を解くためには、どういった力が求められ、そのためにどのように学習をしていけばいいのでしょうか。