無学年制の算数タブレット教材「RISU」では、「最近接領域」の考え方に基づき、子どものモチベーションを向上させる仕組みが用意されています。この教材を開発・運営しているRISU Japanの取締役・加藤エルテス聡志さんは、「これからの時代を生き抜く子どもを育てるために、親は従来の常識に立ち向かい、子どもにとって最善の行動を取るべき局面があります。これを僕は“Go Beyond the Rules(ルールを飛び越えていけ!)”の瞬間と呼びたいと思います」と語ります。自分自身、“Go Beyond the Rules”を繰り返してきたからこそ見える地平から、“Go Beyond the Rules”に挑む親たちの背を押すメッセージを送る連載です(これまでのバックナンバーはこちら)。東大を卒業後、就職、転職を経て、起業した加藤さん。加藤さんに、ルールを飛び越えたことによって得たものを振り返ってもらいました。

部外者だからこそ、教育を変革したい

「哲学的なことを学ぶ教育は親が担うべきです。家庭教育が最強。あらゆる調査結果から考えて、私はそう断言できると思います」(RISU Japan取締役・加藤エルテス聡志さん)
「哲学的なことを学ぶ教育は親が担うべきです。家庭教育が最強。あらゆる調査結果から考えて、私はそう断言できると思います」(RISU Japan取締役・加藤エルテス聡志さん)

 僕が中学3年生のときに、地元の大阪から東京に引っ越して中学校に入学し、その後、高3で自主退学の道を選んで得たもの、って何でしょう。それは、読みたい本を読み、聞きたい相手の話を聞きに行くのに必要な「時間」と「自由」でした。東京はやっぱり情報量が違います。浪人時代に通った予備校では、自分で勝手に好きな先生を選べるのがよかったですね。「地理だったら河合塾のこの先生。英語は代ゼミのあの先生……」と。

 これからは日本の教育を変えていきたいと思っています。教育という分野は、これまでも多くの優秀な人が頑張ってきましたが、依然として「すべての子が同じ年齢で同じ内容を同じペースで学ぶ」というスタイルは100年以上変わっていません。誰一人としてその考え方を変えられていないんです。

 そこに対して、部外者である僕だからこそできることをやりたい。

 近代の学校というシステムが“発明”されたのは、二百数十年前の産業革命時代。イギリスで、労働法や工場法が改正されたときです。それまで、子どもは単に“小さな大人”と思われていました。乳幼児の年齢を超えると労働しなければならなかったので、ある意味「子どもはいなかった」ともいえます。産業革命期になって「子どもは集めて規律を学ばせて育成しなければいけない」という考え方が初めて“発明”されたのです。

 どんな子どもでも「その子ならではのスピード感や才能を重視して、特別なカリキュラムで育てなければいけない」とは思っていません。従来の教育でやってきた「みんな一緒に」を快しとする子もいるのです。これまでの200年間を支えてきた社会構造の根底には、「大量生産」を前提とする製造業を支える考え方がありました。マニュアルを正確に読み、正しく計算ができ、ルールを守ることができる恭順な国民がいることが必要でした。これからもそうした働き方を目指すのであれば別にそれでいいと思うのです。それが悪いわけでは全くありません。そこは誤解してほしくありません。

 でも、すべての子がそこに適性があるわけではなくて、建築をやってみたいとか、ロボットを研究してみたいとか、経営に挑戦してみたいとか、数学者になってみたいとかいう子どもたちに合った教育が今、技術的にはできるのに、教育現場ではそれが実現していないのが残念なのです。