集団で何かやることの面白さは、手作りのお化け屋敷で知った

猪子 美術の成績は良かった。絵を描くのも好きだった。コンピューターをちゃんと触ったのは大学に入ってから。初めて作品を作ったのは、チームラボを始めた後からだから、2001年。

加藤 もともとチームラボって、作品を作るために作られた会社ではなかったよね。

猪子 でも、何か作りたかった。何かを作れる場所を作ろうと思って。ラボラトリーだもん。でもその場所を存続させるために仕事はしてたよ。ウェブ作ったり、システム作ったり、それはそれですごい好きだった。今でもチームラボの7割ぐらいはソリューションの仕事、つまりウェブやシステムを作っていて、残りの3割が、遊園地を作ったりアートを作ったりしています。創業時からアートをやっていたけど、残念ながらあまりお金にならない。創業メンバーのうち、僕のほかの3人はソリューションの仕事をやっていて、その事業は少しずつ伸びていて、僕は今、幸運にも1ミリもそっちには関わってない。本当に幸せなことです。

加藤 集団で何かやることの面白さを知ったのはいつ?

猪子 分かりやすい回答だと、小さいころ、夏に複数の家族でペンションに行っていて、そこの部屋で子どもだけでよくお化け屋敷を作ってたの。みんな、幼稚園児とか小学生とかだったね。自分と同じような年齢の子どもたちとお化け屋敷を作って、大人を驚かせるわけ。大人は驚いてくれてたんだと思うけど、それが楽しかったの。それで、高校のときも文化祭でお化け屋敷を作ってた。高校終わって大学中にチームラボを作りたかったんだけど、結果的には卒業してから作った。

加藤 仲間と物作りをすることの始まりは、子どものころのお化け屋敷だったんだ。

猪子 自分一人じゃできないじゃん、規模的に。仲間と一緒に大人数を動かしたほうが、大きいものを作れるから。高校一年のときはひとクラス40人で作ったよ。

―― 最後に一つ、愚問ですが……。猪子さんが作る「未来の遊園地」と本物の「原生林」が、今目の前にあったとしたら、どちらで遊びたいですか?

猪子 そりゃ、原生林がいいに決まってる。でも、原生林がない。

加藤 アートの中に入って体験する。チームラボの作品は常にそうだよね。

猪子 そう。意思を持った身体によって自ら入り、世界と自分の間には境界線はなく、連続しているものだと感じてほしい。

2018年2月9~18日に徳島県徳島市中心部で開かれる「とくしまLED・デジタルアートフェスティバル」に展示される、「チームラボ 川と森の光のアート祭」内の「城跡の山の呼応する森」。木は、人や動物が近くを通ると、光の色を変化させ、色特有の音色を響かせる
2018年2月9~18日に徳島県徳島市中心部で開かれる「とくしまLED・デジタルアートフェスティバル」に展示される、「チームラボ 川と森の光のアート祭」内の「城跡の山の呼応する森」。木は、人や動物が近くを通ると、光の色を変化させ、色特有の音色を響かせる
同じく、「チームラボクリスタル花火」。スマホで好きな花火を選んで投げ込むと、巨大な立体の花火が打ち上がるのを見ることができる
同じく、「チームラボクリスタル花火」。スマホで好きな花火を選んで投げ込むと、巨大な立体の花火が打ち上がるのを見ることができる

チームラボ/teamLab

プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて、集団的創造をコンセプトに活動している。47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet」、5時間以上待ちとなった「DMM.プラネッツ Art by teamLab」、シリコンバレー、台湾、ロンドンでの個展、シンガポールで巨大な常設展など。現在、北京、深センなどで展覧会開催中。http://teamlab.art/jp/

(構成/日経DUAL編集部 小田舞子、撮影/稲垣純也)