時間通りに学校に行けない子

―― もし今お二人にお子さんがいたとしたら、何を一番教えたいですか? つい子どもに「社会のルールを守ってほしい」とか「他の人に迷惑を掛けないように」とか言ってしまうのですが。

猪子 そう。迷惑は掛けないほうがいいんだけど、他人が喜べば、それは“仕事”と言えるよね。「他人が困っていることを助ける」でもいいし、「他人が喜ぶことを創る」でもいいし、「他人が成したいことをより成せるようにする」でもいい。

 仕事というのはさ、ほぼすべて答えの無い問題に対して、答えを作り出しているわけです。何をやってもいい。他人が喜べば正解、他人のためになれば正解。答えは一個ではなく、無限に答えがある問題を解いている。もしかして誰も喜ばなければ不正解なのかもしれない。

 今後はもっとそうなるね。コンピューターやインターネットが発達して、「もう分かってる答え」はネット上にあるわけだし、人工知能なんてのは、答えが明快なものにのみ機能する技術であって、答えのない問題には機能しないから。だから、答えのある問題に関しては、人間をすぐに凌駕する。

 自分の子どもに何を教えたいか、なんて分からないけど……(笑)。

加藤 「ちゃんと座って静かにしなさい」とは言わないだろうね。

猪子 だって、僕が静かにできなかったもん。街を探検して、身体により世界を知覚しないといけなかったから(笑)。
 
加藤 授業には出席していたの?

猪子 小学校のときはね、時間通りに学校に行けない子で、遅刻してた。それでも小学校のころはかわいいもんだよね。数分の遅刻だったから。中学校になったらそれが数十分。高校になったら数時間。大人になったら時間の概念が欠落してしまって。やっぱりあれは訓練だね。訓練必要!

加藤 あはは。僕に子どもがいたとしたら、「人の役に立て」と言うと思う。「人の迷惑になるな」じゃなくて、ポジティブにさ。でも、人の役に立つやり方って人それぞれ違うと思う。猪子君はフロー状態に入ったら、めちゃくちゃ生産できちゃうじゃん。時間を守らなくても成り立つんだよね。

 猪子君はそれこそ図工とかの成績は良かった? 美術とか。絵を描くのは好きだった?