帝国データバンクが2017年7月に実施した「女性登用に対する企業の意識調査」によると、国内企業の女性管理職比率は平均6.9%と、政府が掲げる目標「2020年までに30%に」には遠く及ばない。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)在日支店における女性管理職比率は国内企業の平均の約3.5倍の24%だ。さらには、在日代表のグラント・ナッキーさんは、現職に就任した2016年3月以降、それまで14%と低迷していた同行の女性幹部比率を36%に引き上げた。その手法と背景にあるANZのポリシーに迫る。

性別、国籍、経験……すべての点において多様化を追求

「経営幹部にも、様々な経歴を持ち、様々なものの見方ができる人材がいたほうが、より効果的な判断ができる」(オーストラリア・ニュージーランド銀行の在日代表、グラント・ナッキーさん)
「経営幹部にも、様々な経歴を持ち、様々なものの見方ができる人材がいたほうが、より効果的な判断ができる」(オーストラリア・ニュージーランド銀行の在日代表、グラント・ナッキーさん)

 ANZ在日代表のナッキーさんは、女性幹部比率を急速に引き上げた理由をこう語る。

 「銀行業にとって、ダイバーシティーはこれまでも重要な価値観ではありました。しかし近年の顧客ニーズの多様化を受け、行内の政策決定の場でも、幅広い観点から物事を考える必要が生じています。そのため、ダイバーシティーを、これまでよりさらに明確な戦略とせざるを得ないのが実態です。経営幹部にも、様々な経歴を持ち、様々なものの見方ができる人材がいたほうが、より効果的な判断ができることは確実です」

 ナッキーさんが在日代表に就任した当時、経営メンバー12人は50代前後の男性ばかりだった。「大局的に見て、有効な判断ができるチームだとは思えなかった」。そこで、より理想的なメンバー構成に変更することを検討し始めた。

 最初に見直したのは採用プロセスだ。人材仲介者に、ANZがどのようなプロフィールの人材を求めているかを伝えることから始めた。「ダイバーシティーという側面から見て『こんな人材が欲しい』という具体的なビジョンを持つと、その後の採用プロセスが進めやすい」。加えて、ANZは、約3年前から、採用の候補者リストと採用する面接官に、必ず女性メンバーを入れるというルールを採用している。

 こうして人材採用のポリシーを改善した結果、経営幹部の多様性は、性別のみならず、国籍という点でも格段に向上した。以前は、代表ともう一名を除いて、経営メンバーは全員日本人だったが、現在は中国人、イギリス人などが加わり、国籍は4カ国になった。「国際的なお客様を相手にビジネスをしている銀行として、経営メンバーは多国籍であるほうがいい」。また、メンバーの経歴も多様化した。伝統的な銀行でキャリアを積んだ人材だけでなく、多様な業界を知るメンバーも増えた。

 「この結果、メンバーの相互作用から、メンバーから上がってくる情報や議論の質に至るまで、すべてが変わり、経営判断が変化してきた」

 これが従業員にも新しい影響を与えている。経営メンバーの多様化が社内の活性化につながり、2017年7月には「企業の持続可能性とダイバーシティーを考えるワーキンググループ」という草の根グループが立ち上がった。「興味を持った従業員なら誰でも参加できる活動で、グループのメンバーは『ANZを日本一の外資系銀行にしよう』と張り切っています」

 ただし、女性活躍という視点で見た場合、まだ大きな課題が残る。それは女性管理職比率だ。現在、ANZの女性管理職比率は24%。課長レベルの7割以上は、いまだ男性が占めている。「女性管理職比率を上げるのは一筋縄ではいかないでしょう。課長レベルで中途入社してくる女性やプロモーションを含めて、この層の女性比率を上げることが第一歩だとは思いますが、そのための対策はまだまだこれからです」

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