両立の大変な部分は、かなり乗り越えられる

 「『子どもを会社に連れて来られる』『中抜けもできる』というだけで、育児と仕事の両立の困難さは、かなり乗り越えられています。例えば保育園や学校の面談などでも『ちょっと行ってきます』と出ても問題ないため、数十分間の面談のために半休を取る必要がありません」と佐久本さん。詳しくは後編で紹介するが、同社では職住接近を推奨しており、およそ8割の社員が徒歩通勤可能な範囲内に住んでいるという。

アトラエの佐久本侑里さん
アトラエの佐久本侑里さん

 佐久本さんは、これまでも先進的な働き方をしてきた。1人目出産の育休後、実家のある沖縄に住みながら、リモートワークでフルタイム復帰した。まだリモートワークがそれほど一般的ではなかった2010年のこと。「もちろん沖縄支社はなかったのですが、社長に相談したら『いいんじゃない』と。そのときたまたま沖縄在住の新卒採用の内定者が1人いたので、彼女も我が家に来て2人でうちで仕事していました」

 現在も、子どもが急病などで保育園や学校に行けないときはリモートワークを活用している。「リモートワークで仕事をするのが厳しそうな状況なら、『やはり有休にします』と判断することもあります」(佐久本さん)

 「働く場所は問いません。例えば子どもの習い事の付き添いで、どこか違う場所にいても、そこでちゃんと仕事ができているなら勤務時間としてみなします。そもそも時間で働くという考え方はあまりしておらず、やるべきことがしっかりできていれば問題ないです」(南さん)

 また、情報共有が進んでいるため、属人的な仕事が少なく、誰かが突発的に休まなくてはいけない事態に陥っても、カバーしやすい側面もある。この「情報共有」のレベルが相当高いのだが、それを理解するには、まずユニークな組織運営について知る必要がある。

上司も部下もないフラットな組織

 同社は従来の一般的な企業のようなヒエラルキー型組織ではなく、上下関係のないフラットな組織運営をしている。取締役以外は役職がなく、名刺にも肩書や部署名は書かれていない。一般的な企業の部や課に当たるのが「プロジェクト」。例えば佐久本さんは管理部門に当たる「ADMプロジェクト」に所属し、現在はコンプライアンスなどの内部統制に関わっている。

 「プロジェクト単位でリーダーはいますが、上司ではないし役職でもない。ただの役割です。リーダーよりメンバーのほうが給与が高いことや、違うプロジェクトに移ったらリーダーじゃなくなることもあり得ます」(佐久本さん)