月間80時間以上の残業は、社長が自らチェック

 「この業界は『3K』とか『8K』とか言われてきました。その中でも当社は、昔は24時間365日元気で長く働ける人が評価される企業グループでした。自分自身を振り返っても、子どもがいつ大きくなったか分からないぐらい、子育てはすべて妻任せ。知的産業でありながら労働集約型になってしまっていました。かつては社員を見て『目が死んでるな』と思うことはよくありました。まさしくブラックそのもの。長時間働き過ぎるとやはりイキイキできませんよね、それではよい提案をお客様にできません」。かつてのSCSKについて谷原さんはこう語る。

 そんな現場で、いったいどのように残業を減らしていったのだろうか。例えば、2016年度の月間平均残業時間は17時間47分と短く、確実に成果を上げている。

 「誤解しないでほしいのですが、目標としている『残業時間20時間未満』というのはあくまで『全社の平均残業時間』です。つまり、忙しい現場では40時間、50時間、それ以上の人もいるかもしれない。お客様がトラブルに見舞われているのに『我々は働き方改革なんで、帰ります』なんてことは言えませんからね。ただ、常にみんながそういう状態ではないはずですよね。例えば、それが2カ月続いていたら、そこには何か慢性的な事情があるはずです。そういうときはライン管理職がお客様のところへ行って現状の課題を把握して改善します」

 こうしたトラブルの“早期発見”のために、残業時間によって勤怠認証できる役職者の階層が上がっていくシステムが効果を発揮する。月間80時間以上の残業になる場合は、社長自らが内容を確認し承認をしている。「100人いたら100人分見ます。『仕方がなかった』という事後報告は許していません。長時間労働になりそうなら事前にアラートを上げさせる。とにかく現状を早く把握することが大切です」

モゴモゴしてたら「なんなら僕が直接行くわ」

 数十億円かけて作ったシステムの最後のトラブルや、ギリギリで行われた金融の制度変更による最終追い込みなどで、どうしても2カ月ぐらい残業が増えることはあり得るという。社長が認めるものは認められるが、半端な理由では許されない。「僕自身が現場経験が長いので、あらゆる質問を徹底的に聞きますから、部下も策を講じてから僕のところへ持ってきますよね。モゴモゴしてたら『部長はお客様のところへ行ったんか? なんなら僕が直接行くわ』という勢いでチェックしてますからね」

 全社的なバックアップが必要と判断されたら、チーム力でカバーする。「属人的な仕事なんて、本当はないはずなんです。その担当者の残業が100時間あったとしたら『その人が倒れるかも』という可能性が企業にとってリスクですよね。倒れたらその仕事が止まってしまう。例えば、80人が80時間超えたら、会社全体でバックアップして、長時間残業している人数を40人、20人と少しずつでもとにかく減らして、最終的にゼロにする。利益が減少するかもしれないが、リスクを回避するためにやらなくてはいけません」

 「とにかく『仕組みを作る』のが大事」と谷原さんは語気を強める。「仕組みを作る=業務を理解すること、なんです」