2005年から段階的にテレワーク環境を整えてきたKDDI。新型コロナによる緊急事態宣言時も大きな混乱なく約9割がテレワークに移行した。以降、「出社」に対する社員の意識が大きく変化したという同社で3歳の子どもを育てる共働きママに話を聞いた。前編の今回は、テレワーク活用で見えた課題や、働き方の変化が両立にもたらしたメリットなどについて紹介する。

<KDDI 企業リポート>
前編 KDDI 出社と在宅「ハイブリッド」で育児不安も軽減 ←今回はココ
後編 KDDI 働き方4例を指針に ジョブ型人事制度導入も

 KDDIの経営管理本部経営管理部マネージャーの戸張美穂さんは、3歳の娘を育てるママだ。「人事部や営業などを経て、今の部署でチームリーダーに。その後、2017年に出産しました。約2年間の産育休取得後、2019年4月に同じ立場で復帰しました」。現在、6人のチームメンバーを率いて、技術統括本部の採算管理を担当している。

 「2年間休むことに不安はありましたが、仕事と育児を両立している社員は、周囲に多いです。先輩ママの言葉で、勇気づけられることもあり、例えば、子どもに眠りを妨げられて、自分が寝不足のときに『昨日、眠れなくて』などと相談して『そういう時期あったよ』と言ってもらえると、そうなんだ、みんなそんな感じでやってきたんだから大丈夫、と安心できます」

 「大きく変わりましたね。コロナ前は毎日出社していました。朝の保育園の送りは夫が担当して、私は朝8時半に出社。私は裁量労働制で、午後4時半ごろに退社して迎えに行っていました。月に何回か忙しい時期は、夫にお迎えを任せて残業することもありました。

 共働きの夫とは、家事も育児も公平に分担しています。子どもを産む前から、夕飯は早く帰ったほうが作る、など家事を分担していました。妊娠後は、育児も家事も『母親にしかできないことなんてない』という前提を早くから夫に伝えて共有したのがよかったのかもしれません」

「出社=当たり前」という思い込みが消えた

 コロナ前から、在宅勤務は可能だったが、戸張さん自身は、ほぼ活用していなかったという。「家で仕事をするとしても、帰宅後にメールをチェックして、急ぎのものがあれば、子どもを寝かしつけた後に対応する程度でした。今振り返ると不思議ですが、出社することが当たり前と思っていました。

 テレワークでは仕事ができないと自分が思い込んでいた理由は、今考えると小さなことでした。例えば、1カ月分の数値を集計する作業をする時期などには、エクセルの画面を複数同時に開いて作業することが多いのですが、オフィスでなら2つあるモニターが、テレワークだとノートパソコン1つになる。メンバーの出した数字などで不明点があったときに、すぐに声をかけて解決できたほうがいい、といったことでした」

経営管理本部経営管理部マネージャーの戸張美穂さん
経営管理本部経営管理部マネージャーの戸張美穂さん

 その後、コロナの感染予防のために在宅勤務が推奨されて、2~9月は月2日の出社となった。さらに10月以降、戸張さんとチームの全メンバーは毎週水曜日を出社日と決め、それ以外の週4日は在宅勤務をしている。テレワーク活用で感じた課題を踏まえて決めたハイブリッド型の新しい働き方で、今後も継続する予定だ。「私の業務はすべて在宅でもできますが、出社したほうがよりよい成果が出せると思われる業務は出社日に集めています」