1999年から一部の社員を対象に在宅勤務を導入するなどの取り組みを進めてきた日立製作所。後編では、2度の産休・育休を経て、子育てと仕事の両立に対する職場の意識の変化を肌で感じてきたママ社員に、会社の風土の変化について思うことを聞いた。

<日立製作所 企業リポート>
前編 日立製作所 コロナ後見据えて在宅勤務活用を「標準」に
後編 日立製作所 男性管理職の意識改革で過剰な配慮をなくす ←今回はココ

 日立グループでは、仕事と育児を両立させながら働く従業員が増えたことを受けて、2012年度から「日立グループ産休前・復職支援セミナー」を半期に約4回、定期的に開催。コロナ下の今年もリモートで開催した。育休後の働き方に詳しいコンサルタントを招いての講演や、仕事と子育てを両立している先輩社員によるパネルディスカッションなどを実施。本人と上司が一緒に受講する形態をとり、1回あたり70名(35組)程度が参加しているという。日立製作所の金融システム営業統括本部で主任を務める2児のママ、今泉直美さんも、産休に入る前にこのセミナーを受講した。

日立製作所の金融システム営業統括本部で主任の今泉直美さん。小2の長男と4歳の長女を育てる
日立製作所の金融システム営業統括本部で主任の今泉直美さん。小2の長男と4歳の長女を育てる

 「先輩社員から、子どもを産んだ後の1日のスケジュールがどんな感じになるのかを聞くことができて、復職後の両立生活を具体的にイメージできるようになりました。両立可能な働き方を実現するには上司を巻き込むことも大切なので、上司と一緒に受講するというのがこのセミナーのいいところだと思います。男性上司に復職後の生活について理解してもらえるようになった点が、私は助かりました」

 部下を持つ管理職に対しては、「子育て中の女性社員に負荷の大きな仕事は任せられない」といったアンコンシャス・バイアスについて振り返るプログラムなどがあるマネジメントセミナーを開催している。管理職の思い込みや過剰な配慮をなくす意識改革のきっかけにするとともに、多様性を生かすマネジメントのあり方を会社として支援する。

 「長男の育休から復帰した2014年の時点では、『子育て中の社員には負荷のかかる仕事は任せないようにしよう』といった過剰な配慮が、あちこちで見られました。私は復帰したからには責任ある仕事も担当させてほしかったのですが、当時はそういう思いを上司に伝えても、なかなか理解してもらえない部分がありました。

 その雰囲気が、長女の育休明けの2017年の時点ではガラッと変わっていたので驚きました。『どんな事情があるかは人それぞれだけど、事情を抱えながら働いているのはみんな一緒だよね』と、子育て中であることを特別視しない考え方が社内のスタンダードになっていたのです。後輩世代の社員も、子育て中の社員を将来の自分の姿として捉えるようになっていて、何かあるとすぐにサポートしてくれました。

 現在の部署は30人のメンバーのうち女性は4人と、男性比率が高いのですが、男性社員が私のことを“子育て中の女性”という型にはめた考え方をすることはなく、意識が10年前とは大きく変わったように思います。多様性を認め合う風土ができつつあり、働きやすい環境づくりを本気で考えているんだと実感するようになりました」