日経DUALの「共働き子育てしやすい企業ランキング2017」で見事グランプリを受賞したSCSK(「『共働き子育てしやすい企業2017』50社発表!」)。2011年の合併以降、増収増益を続けるSCSKが、残業時間を削減しつつ業績を伸ばし続ける秘訣を伝えるセミナーが7月6日、「ヒューマンキャピタル/ラーニングイノベーション 2018」にて行われました。SCSK理事・人事グループ・副グループ長の小林良成さんによる講演をお伝えした前編に引き続き、今回は、会場から寄せられた質問に小林さんが回答。会場で残念ながら時間切れとなった質問は、後日改めて小林さんが回答してくださいました。今回の後編でも、その続きをお伝えします。

【日経DUAL×SCSKセミナー】
(1)SCSK「働き方改革に近道はない」3年目の腹落ち
(2)最先端企業SCSKが働き方改革の質問に答えます
(3)SCSK 期初に部署ごとの年間残業時間を宣言する ←今回はココ

最初は社内でも不公平感があった

SCSK理事の人事グループ・副グループ長の小林良成さん
SCSK理事の人事グループ・副グループ長の小林良成さん

セミナー参加者による質問(以下、――) パートナー企業に協力をお願いする際、課題や壁はありましたか。

小林さん(以下、敬称略) パートナー企業との働き方改革も進めています。パートナー企業とも、働いた時間に応じたお金の計算ではなくて、成果物の評価できちんとお支払いする、というように契約を見直しています。さらには、パートナー企業のメンバーの残業時間も共有させていただいていて、弊社からお願いする仕事のやり方が適切かどうかも確認しています。

―― お客様に迷惑をかけずに進められたのは、何か策があったのでしょうか。

小林 社長がお客様に手紙を書くという取り組みはしました。これを役員や部長がお客様に持参し、「ご迷惑はかけずに、ちゃんと成果を出しますので、ご協力をお願いします」と伝えてきました。お客様によってご理解いただくスピードは違いましたが、少しずつ理解をいただいてきています。ちなみに、これが原因でお客様から契約を切られたケースはないと聞いています。

 もちろんトラブル時にお客様を放置することはありませんから、そういうときは残業を含めて対応しますが、「平時はちゃんと帰る」「有給休暇をしっかり取る」といったメリハリのある働き方をさせていただきたいということです。当初は、理解してくださったお客様を担当する当社の社員は早く帰ったり休んだりできましたが、そうでないお客様を担当する社員はなかなか休めず帰れないケースもあり、社内でも不公平感はありました。

 また、特に難しいのは、お客様先に常駐して仕事しているケース。周囲にいるお客様が誰も帰っていないのに「自分だけ帰る」というのは空気感としてなかなか難しいですよね。少しずつご理解いただいて変わってきました。今もお客様によって温度差はあると思いますが、「落ち着いているときは早く帰る」はだいぶ浸透しているとは思います。現在も工夫を続けているところです。

1人で抱えるのではなく、複数で担当しよう

―― お客様対応が、誰か(シングルの方や子どもがいない方など)に集中することはなかったのでしょうか。

小林 誰かに集中してしまうというのは、働き方改革以前から存在する課題ですね。とはいえ、有給休暇を20日間取ると実質、全社員11カ月しか働けなくなりますし、残業もそう頻繁にはできません。そのため、誰かに業務を集中させてしまうと仕事が滞りますから、極力、仕事を全体に分散させるように地道に工夫をしています。

 他にも、例えば10人いる部署で、1人が1社ずつ、合計10社の企業様を担当している場合、1人欠けたら、1社の担当者がいなくなってしまいます。そうならないように、複数人がそのお客様の状況が分かるように情報を共有しておこうとか、自分が休んだときにも助けてもらうのでお互いさまだから、1人で抱えるのではなくて複数人で担当しよう、といった工夫を現場で始めています。こうした対策は、もちろんすぐにはうまくいきません。まずは、担当者がその場にいなくても問い合わせを確実につなぐなど、「お客様にご迷惑をおかけしないように」というレベルから始めて、だんだんとノウハウを共有するようになってきました。正直、今も優秀な社員に業務が集中してその人の残業が多くなることはあります。ただ、それでも特定の社員の残業が増えないようにコントロールしますし、有給休暇もちゃんと取れるようにしています。

 子育て中の社員についていえば、今はみんなが定時で帰ることを目指して働き、在宅勤務やフレックスなどを使った柔軟な働き方が普通になっているので、短時間勤務の人が目立たず、遠慮や心苦しさが減ったと聞きます。子育て中の人にとってはウエルカムな改革ですよね。

―― 部門間の温度差はなかったのでしょうか。