澤田さんは第2子の育休から復帰後、時短勤務を選んだが、違う保育園に預ける2人の子の子育てとの両立は苦労があった。「0歳児は延長保育が利用できず、保育の上限が8時間。9時から16時半の時短勤務でしたが、朝か夕方のどちらかがはみ出すため、夫の都合もつかないときは、ファミリーサポートの方に送りやお迎えを依頼していました」

 「ただ、自分自身も、以前よりも短い時間で、疲弊せずに仕事の成果を出せるようになった実感があり、働き方の見直しは働くすべての人にプラスになる、という確信は強まりました

社員満足度は2012年から2018年まで毎年最高値を更新

 2016年以降は、全社プレゼン大会の形式で、各部署での取り組み内容・成果を全社で共有した。並行して、残業時間が一定基準を超えた際にアラート通知をするなど、長時間労働の発生を抑える取り組みも実施。また、人事考課に「生産性」の項目を設け、時間内で成果を上げる能力・取り組みを評価。人事考課の際には時間外労働時間のデータを参照している。

 2012年から始まったTHCはプロジェクトという形式では2017年に終了。「2012年と2018年を比較すると、売上高は1.8倍、経常利益は2.2倍ですが、社員の総労働時間は増えていません。生産性は上がっているといえます。時間内で高い成果を上げることをよしとする風土になりました」(澤田さん)。2018年の月平均残業時間は15.8時間。また、同社で毎年実施している社員満足度調査の満足度平均値は、2012年から2018年まで毎年最高値を更新しているという。

 「今後取り組みたい課題はテレワーク」と澤田さんは言う。「徐々に拡大はしていますが、全社員の80%以上を占めるソフトウエア技術職は、組み込みソフトウエア開発という業務の性質上、セキュリティーや使用機材などの制約でテレワーク活用のハードルが高いのは事実です。でもテレワークができる仕事内容を細かく切り出して役割分担し、本当に必要な人に割り振る余地はまだまだあると考えています」

 後編では、引き続き澤田さんと、育休を2回取得した男性社員に登場いただく。

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部) 写真/花井智子