体重計や計測器で知られるタニタ。「タニタ食堂」などの外食事業も展開している。同社では早くから健康経営に取り組んでおり、効果を検証したうえでパッケージ化して企業や自治体に提供している。前編では、社員だけでなくその家族まで健康にする「タニタ健康プロジェクト」を紹介する。

<タニタ企業リポート>
前編 タニタ 活動量計が社員証、健康意識を高める仕組み←今回はココ
後編 タニタ 個人も会社も成長するための独自の働き方改革

 「テレワークで運動量が減ったので太った」「子どもが休校で家に居るという、いつもと異なる環境下での仕事にストレスがたまって過食気味になった」

 コロナ禍で急速に広がった、テレワークという働き方。職場への通勤が可能になっても、希望する社員には選択肢の1つとしてテレワークの継続を認める企業は多いという。育児や介護と両立しやすくなる一方、不安視されているのが「健康二次被害」だ。

 通勤だけが唯一の運動だったという人など、もともと運動習慣がない人の中には、「在宅勤務、すなわちメタボへの道」という人も少なくない。経営的な視点から社員の健康を考え、戦略的にその向上に取り組む健康経営の促進が、今後、企業にはこれまで以上に求められることになるだろう。

 社内で健康経営の実践に以前から取り組んでおり、効果を検証したうえでパッケージ化して企業や自治体に提供しているタニタに、社員だけでなくその家族まで健康にする「タニタ健康プロジェクト」について聞いた。

タニタ社員の健康状態を可視化

 「『タニタ健康プロジェクト』は、タニタが推進する健康経営の一環で、社員の健康づくりを目的としたものです」と、タニタの広報課の横田洋子さんと、サービスの運営を支えるタニタヘルスリンクの土佐文子さんは言う。

 タニタが社員の健康づくりに着手したのは、現社長の谷田千里氏が現職に就任した翌年の2009年。その前々年にスタートした「歩数計や血圧計、体組成計などで得たデータを専用サイトに送り、パソコンや携帯電話で管理する」というサービスの普及が進まなかったことがきっかけだった。

 改善点を探るべく、全社員に機器の利用を義務化した。社員は通信機能のある歩数計を持ち歩き、日々歩数を計測して社内の体組成計で体重、体脂肪率、筋肉量などの変化を確認するようになった。この取り組みのフィードバックにより、機器の使い勝手が大きく改善していくのだが、思わぬ副産物があった。計測した結果は、専用サーバーに転送されて簡単にチェックすることができる。これまで健康管理に興味が持てなかった、あるいは持つ時間がなかった人も、健康づくりのPDCAサイクルが自然と実践できるようになり、なんと社員の平均体重が3.6キログラム、平均体脂肪率は1.7パーセントも低下。さらに、医療費も1割近く低減したのだ。

 同時期、08年から特定健康診査・特定保健指導がスタートした。生活習慣病の予備軍であるメタボ対象者を減らすことは経営的にも大事で、健康をはかるビジネスを展開する自社が社員の健康状態を可視化・改善していくことは今後の重要なファクターになるとして、自社の健康経営への取り組みを本格化させた。同時に機器やシステムの刷新を重ね、14年からは自治体や企業に向けて、医療費を適正化するパッケージ「タニタ健康プログラム」として提供している。

 同社での「タニタ健康プロジェクト」では具体的に何を実践したのか、次のページから紹介する。