日経DUALの「共働き子育てしやすい企業グランプリ2017」で6位にランクインした積水ハウス。同社の「両立しやすさ」について、パパ社員とママ社員にお話を伺い、前・後編に分けてお届けする。後編では、建築士として設計部で働き、「設計職で部署初」の産後復帰を果たし、2人の子どもを育てながら管理職になった女性社員にご登場いただく。

復帰1年目は「辞めよう」と毎日のように思った

 「1人目の子どもを出産して復帰1年目は『辞めよう』と毎日のように思っていました」。積水ハウス設計部東京設計室の小泉しをりさんは、そう振り返る。1997年に設計職として新卒入社した小泉さん。設計職の女性は、採用が少なく、女性設計職の同期は会社全体で数人しかいなかった。入社3年目で一級建築士の資格を取得。その後結婚し、入社7年目で出産した。

 「当時はどこの会社も同様だったと思いますが、妊娠を報告して『育休を取ります』と伝えると、『え、続けるの?』と返答されるような時代。夜遅くまで図面を書かなくてはならない設計職では継続が難しいのではないかと上司が、気を使って『事務職にしようか』と思っていたと、後から聞かされたこともありました

 設計職で部署初の産後復帰を果たしたが、まだ社内に時短勤務の制度がなかった。そのうえ、夫の仕事の都合で当時は宇都宮に住んでいたため、東京まで新幹線通勤をしていた。保育園の送りは、勤務先が近い夫が担当。子どもの発熱などで保育園から呼び出されると、遠方に住む小泉さんの両親や義理の両親にも来てもらって乗り切った。

「1人目の子どもを出産して復帰1年目は『辞めよう』と毎日のように思っていました」(積水ハウス設計部東京設計室・小泉しをりさん)
「1人目の子どもを出産して復帰1年目は『辞めよう』と毎日のように思っていました」(積水ハウス設計部東京設計室・小泉しをりさん)

「俺はもう無理」と“ワンオペ夫”が音を上げた

 個人向け住宅を扱っているため、同社が最も忙しいのは土日。小泉さんがいる部署も火水が休みで、土日は出勤日だ。「土日に出勤しようとすると、子どもに『ママ、行かないで』と泣かれるのが辛かったですね」。土日の育児・家事は夫が担当してくれていた。

 だが、あるとき「俺はもう無理だ」と夫が音を上げた。「夫に子どもを任せられるから、じっくり時間をかけて働ける土日に集中して終電まで働く日々を続けていたら、夫は夫で、ワンオペの男性版みたいな感じで、かなり無理をしていたようです。女性だったら土日に他のママ友と一緒に遊べたかもしれないけれど、当時はまだイクメンも少なく、パパ友もできず、苦しさを打ち明けられず、限界だったようです」

 「辞めるしかない」と悩んだ小泉さんは上司に相談。上司は「どうすれば続けられるのか」と一緒に考えてくれ、火曜日を出勤日にする代わりに、日曜日を休みにするという柔軟な対応をしてもらえた。「あのときは、上司に助けられましたね。おかげで、家庭が上手く回るようになりました」

 一般的に、親が日曜出勤の仕事についている場合、子どもの預け先の確保から苦労することが多い。最近は積水ハウスでも、日曜保育のサポートを重点施策とし、夫婦共に日曜出勤の場合、時差出勤の幅を拡大して夫婦交代で保育を分担できる「パートナーシップスライド」などを実施している。また、支店によっては、「ファミリーフレンドリーデー」として交代で日曜を休む、などの対策を取っているという。

 住宅メーカー業界に限らず、土日も出勤する勤務体系の業界は数多くある。片や、通常の保育園は、日曜・祝祭日は休みの施設が多い。これも日本の保育が抱える課題の一つだ。子どもが小学校に上がっても、この悩みは解決するどころか、さらに深くなる。実際に悩んでいる子育て中社員も少なくない。