育休を有効活用し、英語という「第二の柱」も構築

 寝かしつけの際は、絵本を30分かけて読む。「絵本も、育休で出合った素晴らしいものの一つですね。いい話が本当にたくさんあるんですよ」。育休のおかげで、自分が幼い頃に好きだった恐竜にも再会できた、と寺西さん。「育休後に2人の子どもを連れて、ニューヨークの博物館まで化石を見に行きました」

 育休をきっかけに、それまで知らなかった「保育園の保護者会」という世界にも足を踏み入れ、2年連続で役員を務めた。たまたま園舎の建て替え時期で、ボルダリングの遊具を導入するために寄付集めに奔走し、成果を挙げた。3年目となる現在は、会長を務めている。

 また、育休を有効活用し、仕事上の「第二の柱」も構築した。「『省エネ』という専門性に加えて、英語という2本目の柱を作りたかったので、普段はなかなか読めない英語の分厚い本を読むなど、できる限り英語の勉強をしました。ひょんなことから、NPOが運営する『奈良カエデの郷ひらら』 にコレクションを寄贈したカエデ専門家と知り合い、世界から見学に訪れるお客さんを英語で案内するボランティアもしました」

 復帰後は、積水ハウスが環境対策の国際的な枠組みに参加する際の窓口業務に携わっている。「第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(UNFCCC、COP23)のために、副社長に同行してドイツに海外出張も行きました。時短勤務なのに、海外出張を伴うやりたい仕事をさせてもらい、やりがいを感じます

 「COPなどに参加すると、一流の専門家に出会えます。国際的な舞台で女性が当たり前に活躍しているのを見ると、本当に『かっこいいな』と思います。それを見ていると、エチケットとして妻の仕事も応援しなくてはいけないな、と自然に思います」

「妻を手伝っている」から「2人で力を合わせている」へ

 最後に、念願の積水ハウスのマイホームで子育てした感想を聞くと「小さいけど庭があるんです。この庭がいい。イチゴやビワなどを植えてね。育休中に仕込んだフルーツが最近、実をつけるようになって楽しいですよ。狭くても季節を感じられますし」と寺西さん。

 賃貸併用住宅として設計した自宅での省エネルギーの工夫は特許として登録されたが、子育てを経験して「住宅の省エネ」というテーマにも新たな視点が加わった。「家は家族のために建てるものだと再認識しました。そのうえで、どうやって省エネを実現するか。エコ意識が進んでいるドイツなんかは、ちびっこのときからエコ教育がすごいんです。意外と、自宅の庭で何かを育てる、お父さんがゴミを分別している姿を見せるといったことが大事なポイントなのかもしれないと思います」

   “持続可能な働き方”を模索し、時短勤務という独自のワークスタイルに到達した寺西さん。「以前は『妻を手伝っている』感じだったのが、『2人で力を合わせている』に変わりました。妻との関係は本当に良くなりました。今後は男性も育児・家事を分担する世の中になるに決まっていますから、男性もぜひ育休を取ってほしい。育児や家事の全仕事を経験したら、色々見えてくることがあると思います」

寺西さんの誕生日を家族でお祝いした日の一枚
寺西さんの誕生日を家族でお祝いした日の一枚

(取材・文/小林浩子、撮影/花井智子)