2030年に「お父さんも育児も家事もしてたよね」と言われたい

積水ハウスで建てた自宅前で。息子2人と一緒に、玄関のアジサイをバックに
積水ハウスで建てた自宅前で。息子2人と一緒に、玄関のアジサイをバックに

 そもそも「住宅において省エネを実現したい」というのが寺西さんの入社動機だった。省エネの分野で博士号を取得した寺西さんが在籍する環境推進部では、持続可能な社会を実現するために「中間目標として2030年までに50%を再生可能エネルギーにする」などの取り組みを進めている。

 「2030年を一つの区切りとして、『供給する戸建住宅、賃貸住宅からのCO2排出量を45%削減』『自社で消費するエネルギーによるCO2排出量を35%削減』など色々取り組んでいますが、2030年といえば、長男が20歳。そう思うと、2030年を自分事に感じるようになりました」

 「2030年に会社としての目標を達成したときに、息子に『お父さん仕事ばっかりしてたよね』と言われたくない。『お父さんは、育児も家事もしてたよね』と言われたい。『キャリアか育児か』ではなく、『白昼堂々と子どもと遊べるお父さんがいる社会』と『住宅の省エネ』のどちらも実現したい。そのためには、自分や自分の家族を変えないとダメだと思ったんです」

 「長期的な目標を達成するために少しずつ変えていく」――。寺西さんは、仕事においても家庭においても、この姿勢を貫くことにした。「『自分の仕事上の評価』『家事・育児の分担』『妻の仕事』という3つの天秤で考えるようになりました。育休を取ったことで、家事と育児の全体量が分かり、自分を見つめ直す時間を取ることができ、家族としてのビジョンが見えました

合理性を追求して、試行錯誤の末「コース料理」に

 「時短勤務をしている男性は多くありませんが、勤務時間をずらして保育園に送ってから出社する男性社員も当たり前にいます。社会も会社も変わって来ています。うちの会社はトップが以前から女性活躍やダイバーシティーに取り組んでいて、理解があると思います」

 現在は時短勤務とはいえ、8時間働く日も多い。月に4~5回は2時間時短して、2人の子どもを迎えに行く。「時短だとその分の給料は減りますが、フルタイムで働ける日は、フルタイム分の給与をもらえるという仕組みです。私はファイナンシャルプランナーの資格も持っていますが、長い目で見れば、妻と夫の両方が少し働き方をセーブしたとしても、2人が働き続けて稼いだほうが絶対いいと思っています」

 寺西さんがお迎えを担当する、ある日のスケジュールを教えてもらった。「通勤に約1時間半かかるので、16時15分に終業し、18時に上の子を学童に迎えに行き、18時半に下の子を保育園で拾う。19時に帰宅して、子どもたちに明日の準備やドリルをさせながら、食事の下準備開始。子どもの入浴と夕飯の順番は日によるが、夕飯前に入浴が終わっていたら20時から食事です」。そんな流れを繰り返して試行錯誤するうちに、寺西さんは合理的な「コース料理」というシステムにたどり着いた。

 「理系で機械・化学好きなので、食材を加熱したり、調味料の配分を考えたりするのは、元々結構好きでした。でも、子どもが2人いると、じっと台所に立っていることは難しい。そこで、コース料理みたいに一品ずつ順番に出し、子どもが食べている間に、次の料理を仕上げるようになりました。例えば、まずはチーズやナッツなど、切って皿に盛るだけで大丈夫な物を前菜として出し、自分はさっと食べて、子どもが食べている間に、次のスープを仕上げる。子どもがスープを食べている間に、メーンの肉を焼く、といった具合です。子どもはゆっくり食べられますし、こちらは台所で調理に集中できるし、『早く食べなさい』と言う手間も省けます」