「キリンビール」や「午後の紅茶」などの飲料分野から新薬開発を行う医療事業まで幅広く事業展開するキリンホールディングス。「キリン」といえばビールの印象が強いため、男性的な働き方を連想するかもしれないが、2007年ごろから女性活躍や多様性の推進に力を入れている。施策の一つとして、子育て中社員をはじめとした時間制約のある働き方に対する理解を深めるために始めた全社員対象のユニークな「なりキリンママ・パパ(以下、なりキリン)」プログラムなどの人事施策について、前編と後編に分けて紹介する。

※取材・撮影は3月上旬に実施。その後、キリンホールディングスは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、グループ社員を対象に「原則出社禁止・在宅勤務体制」を徹底

<キリンホールディングス企業リポート>
前編 キリン人事施策「なりキリン」でパパママになり切る ←今回はココ
後編 キリン 女性社員に早めにリーダー任せキャリア支援

子どもがいない若手社員に「保育園」から呼び出し電話

 「その日の朝、出社してメールチェックやデスクワークを1時間ほどこなしていたら、『保育園』から『子どもが発熱した』という電話がかかってきました。すぐに、上司に事情を話し、その後に予定されていた業務を引き継いで、退社しました」。こう話すのはキリンビールの企画部で働く入社7年目の若手男性社員、金森優太さん。金森さんは既婚者で、妻はいるが、子どもはまだいない。なぜ、「保育園」からこのような電話がかかり、対応したのだろうか――。

 実は、電話の主は、キリンホールディングスの人事部による自動音声だ。

 「キリン保育園 園長の磯崎です。太郎ちゃんが熱を出しました。耳を何度も触っていて急性中耳炎の可能性もあると思われます。今すぐ保育園まで迎えにきてください」

 「太郎」ちゃんは、金森さんが付けた想像上の「息子」の名前。年齢は2歳前後の設定だ。「磯崎園長」の「磯崎」は、キリンホールディングス社長の磯崎功典さんの名字から取られている。

 これは「なりキリン」という、キリンホールディングスが力を入れている取り組みの一つ。実際に小さい子どもがいてもいなくても、子育て中という想定で、時間制約のある働き方を体験させることで、多様な働き方への理解を深めてもらうというのが主な狙いだ。

キリンビール企画部の若手社員、金森優太さん。自ら手を挙げ、2019年10月に1カ月間、「なりキリンママ・パパ」を体験した
キリンビール企画部の若手社員、金森優太さん。自ら手を挙げ、2019年10月に1カ月間、「なりキリンママ・パパ」を体験した

次ページから読める内容

  • 毎日同じ時間に帰らなければいけない大変さを体感
  • 出る必要ない会議を削るなど業務のスリム化を徹底
  • 「補い合う」マインドが生まれ、チームワークにも好影響
  • 妻への気持ちにも変化が

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