今後の課題は「今ある制度をどれだけ使いやすくするか」

 産休や育休で社員が抜けると、抜けた穴を、新たな人員で補充する会社は多いだろう。NTTコムは、産育休を取得する社員が復帰しやすいように、あえて人員補充しないという方針を取っている。抜けた社員の業務は、チーム内で分担し、自分の目標として、評価の対象にすることができる。「本音レベルでは業務量が増えて負担に感じている社員もいるかもしれませんが、時短勤務の社員も多く、お互いに助け合おうという風土はできていると思いますね」と藤城さん。

 「仕事と出産・育児の両立を促す制度を早くから充実させてきており、育休取得後、ほぼ100%が時短勤務を選択します。時短勤務は4時間、5時間、6時間から自分の状況に合わせて選択でき、子どもが小3になるまで、最長9年間継続できます。子どもが小3になるまで取り続ける人は少ないですが、時短勤務が長期化しているのは事実です」

 「リモートワークやフレックスタイムなどの制度は、社内に深く浸透している時短勤務に比べてまだまだ新しい制度ですが、時短勤務と同じぐらい浸透させたい。それらをうまく使えば、ライフスタイルを変えずに、フルタイム勤務に戻すことも可能かもしれませんし、現実に少しずつ実績も出てきています。これまでは仕事と家庭の両立の観点で必要があれば時短勤務の取得を奨励してきましたが、本来の女性活躍という意味では、フルタイムに戻りたいけれど躊躇しているという社員がいればその背中を押してあげたいと考えています」(藤城さん)

 女性社員のニーズは、対話会を開催するなどしてすくい上げている。「例えば、現在フレックスは社員の健康確保の観点から7時~22時ですが、子育て中の女性からは『もっと早朝のほうが働きやすい』という声などが寄せられています。これは新しい気づきでした。今後の課題は、今ある制度をどれだけ使いやすくするか。活用率を上げていく取り組みを進めていきたいです」

(取材・文/小林浩子、撮影/花井智子)