難しいのは、「みんなで同じ方向を向くこと」と「自由」のバランスだという。「従来の日本型のヒエラルキー的な組織では人材は育たないし、反発が来るだけです。でも日本の会社はきっとそうだろうという先入観を持って外国人スタッフは入って来るから、まず『うちは日本型のヒエラルキー的な組織ではない』と分かってもらう。するとみんないったん解放される。でも、だからといって自由人の集まりでは意味がないので、ビジョンを共有しないといけない。そのバランスを整えることが大切かなと感じています

 「外国人スタッフは、従来の日本社会のように『会社に長くいること』を重要視しない。なので『会社に長くいること』ではなく、成果に対して会話をするようにしています。成果を見ていくことが大事だと思います」

仕事で培った世界観を子どもたちにも伝える

 中原さんが日々直面している悩みと解決策は、そのまま「ダイバーシティなノウハウ」となる。こうして蓄積された貴重なノウハウは、DACグループ内で共有・活用されている。「ダイバーシティは企業が余裕のあるときにだけ語られがちですが、本来は業績が芳しくないときにこそ企業が力を入れるべきものだと私は思います」と中原さんは言う。

 海外出張も多いという中原さん。働くパパとして、仕事で培った世界観は、子どもたちにも今から少しずつ伝えているという。「どれぐらい響いているかどうかは分かりませんが(笑)、保育園の送り途中などにいろいろ話はしています。出張に行ったら、地球儀を指差してこの国に行ったよ、なども伝えています。今、毎日仕事をしている中で、将来は、日本語、英語、中国語の3つがしゃべれないと仕事がないのでは、と肌で感じているので、できれば早めに留学もさせたいと思っています」

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部) 写真/花井智子