「女性の管理職がずらりと座る企業を訪問して、日本の現状を伝えたところ、『それは自分のおじいちゃんやおばあちゃんたちが言っていた内容と同じです』と指摘されたのです。それを聞いて、ハッとしました。僕らの両親の世代は、『男は外、女は家庭』という人が多かった。今の僕らの世代は、『男は外、女は家庭』という人もいれば、共働きの人もいて、両方存在している。こういうことは三世代で変わっていくサイクルなのだなと認識しました。つまり、自分の子どもの世代が北欧のような世界観を持つためには、今自分たちの世代が変わらなければいけない。そんな責任感が突如生まれました」

「協力」という姿勢を改め、「分担」を妻に申し出た

 「視察では、月曜日はパパ、火曜日はママ、水曜日はパパのパパ、木曜日はパパのママ、金曜日はママのママ、土曜日はママのパパ、日曜日はみんな、という6人で子どもの世話をしているという家族の話も聞きました。6人で役割分担すれば、1人週1日でいい。とても合理的ですよね。男性と女性の違いは子どもを産めるか産めないかだけ、そんなカルチャーが浸透しています。女性が子どもを産むことを、仕事をする上でのハンデだと誰も思っていません。うちの会社もそんなふうにしていけたらいいなと思います」

 帰国後、中原さんは従来の「協力」という姿勢を改め、「分担」を妻に申し出た。前年には、第二子も誕生していた。ただ、仕事柄、中原さんは夜に取引先などとの会食が入るケースが多い。話し合いの結果、中原さんは「朝」を担当している。朝6時に起きて、子どもに服を着せ、顔を洗わせ、食事をさせ、歯磨きをさせ、食器を洗い、ゴミを出して、保育園へ送る。「私が朝食も作っていたときはあったのですが、妻にはいろいろ方針があって、簡単なシリアルにしようとしたら、和食を食べさせたいということだったので、朝食作りは妻に任せています」

 洗濯は妻担当だが、食器洗いはすべて中原さんの担当。帰宅するとシンクに食器が残されているので、会食後で夜遅くなっても、中原さんが洗って、台所をピカピカにしてから眠る。「台所は僕の聖地ですよ」と中原さんは笑う。

 「本当は、『夫が家事・育児をしている』ことがこんなふうに評価の対象になる世の中がおかしいですよね。もっとたくさん育児・家事をしている妻に言わせてみれば『私はこれも、これもこれもしている、はい評価して、はい褒めてください』という気持ちだと思います

 そんな世の中を変えていくためには、夫や妻自身の意識だけでなく、親の世代の意識を変えていくことも必要だと中原さんは指摘する。「自分たちの親の世代への働きかけも必要だと思います。例えば、親世代が『なぜ夫に食器を洗わせているの』などと言ってしまうと、妻も萎縮してしまうかもしれませんよね」

 自身が家事・育児を分担するようになったことで、仕事上に何か変化はあったのだろうか。「妻と夫の両方の立場の気持ちが分かるようなったのはよかったです。30代の男性社員から『子どもを朝送ることにしましたがいいですか』と聞かれた時も、『いいもなにも、自分もやってるよ』と答えました」

6割が外国籍社員、ダイバーシティなマネジメントが必要

 DACグループ社員の男女比率は女性が51~52%と、男性を上回る。中原さんが社長を務める、インバウンド事業会社「グローバル・デイリー」に至っては7割が女性だという。

 「旅行・観光分野ということも関係しているかもしれませんが、優秀な人材を採用していたら結果的に女性が多くなりました」と中原さん。さらに、外国籍の社員が全体の6割を占める。中原さんは、性別はもちろん国籍も含めて、あらゆる意味でダイバーシティなマネジメントを期待されている。