仕事と育児を両立しやすい制度や仕組みを作っても、それが現場の社員たちに使ってもらえなければ意味がない。活用してもらうにはどうしたらいいか、悩みを抱える経営者や人事部担当者は少なくないだろう。そのヒントとなりそうなのが、日本HPの取り組みだ。下編では、ダイバーシティ推進に全力で取り組み、共働き子育て中の現場社員・管理職たちをつなぐハブ役として制度定着に奔走してきた同社人事部の土井朱(あき)さんにご登場いただく。同社人事部門や土井さんが実施してきた地道な試みとは?

<日本HP取材リポート>
【上】 ママ管理職 部下の妻の視点に立てるのが強み
【中】 毎朝食と週末主夫こなす日本HPのパパ社員
【下】 両立しやすい社内風土、地道なアナログ手法で醸成 ←今回はココ

「環境を整えれば、誰でもいい仕事をする」が大前提

 日本HPは、パソコンやプリンターを製造・販売する米国系企業HPの日本法人。HPの創業者であるウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードが唱えた理念は、80年経った現在でも世界各国の拠点で受け継がれている。

 それは「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだ」というもの。

 日本HPがダイバーシティを推進し、女性活躍推進や子育て中の社員たちが働きやすい環境づくりに力を入れてきたのは、創業理念で明示された大前提によるものだ。

正解は用意しない。機会を用意し、自分でつかんでもらう

人事・総務本部 人事部ダイバーシティ推進担当 土井 朱(あき)さん

 そうした取り組みの一例が、【上編】で登場したママ管理職、沼田綾子さんも参加した「異業種ビジネスリーダーシップ塾」だ。もともと分社前の日本ヒューレット・パッカードが2007年に日系・外資系企業20社と共に開催した女性向けのキャリア推進イベントをきっかけに、その主旨に賛同する8~10社ほどの異業種企業と協業しながら12年にわたり展開している。

 「最初は女性の活躍を応援するシンポジウムという形でスタートしましたが、シンポジウムに参加してもらうだけでは一過性のもので終わってしまい、職場に戻ると日々の業務に追われてそれっきりになってしまいがちでした。そこで6年ほど前から1年間の研修プログラムに変えたら、自分らしいリーダーシップの発揮の仕方やキャリアを前進させる具体的なアクションにつながるという効果が表れたんです」と人事・総務本部の土井朱(あき)さんは説明する。

 プログラムの内容は多岐に渡る。他社の役員クラスの女性を招いてキャリアやが体験談を聴いたり、参加企業の部長クラスの女性たちによるパネルディスカッションを行ったり。また、参加者で異業種混成チームを作り、外部の社長、取締役などのビジネスリーダーにキャリアやリーダーシップについての考え方や、体験談、大切にしていることなどを聴く「リーダーインタビュー」などのフィールドワーク等も行う。多様なロールモデルに触れ、バックグラウンドが異なるメンバーで構成されたグループの中で自分にあったリーダーシップを試行錯誤していく中で、次第に自分らしいスタイルを見出していく。日本HPからは、毎年選抜された女性社員が3〜5人参加しているという。

自分らしいリーダーシップのスタイルを見つける機会を提供している、女性社員向け研修プログラム「異業種ビジネスリーダーシップ塾」の一コマ(参加企業など詳細は【上編】参照)

 「この研修の大前提は、答えを自分で見つけるということ。これが正解です、と答えを押し付けるのではなく、プログラムを通して参加者それぞれに、自分らしいリーダーシップのスタイルとはどのようなものかを考え、答えを出す手がかりにしてもらいます

 これまでにプログラムに参加した社員たちからは、『背中を押してもらった』『肩の力が抜けた』といった感想が多く寄せられてきました。実際、プログラムに参加した女性社員の中で、その後、管理職に昇進したり、キャリアチェンジに挑戦したりする人がたくさん出てきています」(土井さん)

 特に子育て中の女性の場合、突然管理職を打診されても、「両立生活を維持するだけで手いっぱいなのに」などと考えてしまい、昇進を受ける覚悟がなかなか持てない場合が多い。とりあえず受けたとしても、その後、「やはり無理だった」と、途中で役職を降りてしまうケースもある。そうした状況を踏まえた上で、女性ならではの心理に深く食い込み、心の葛藤を克服したり、壁を乗り越えたりしやすい環境を会社として用意しているという訳だ。

次ページから読める内容

  • ビラ配り、ポスター張り…アナログ手法で地道に普及
  • 妊娠前から参加できる「ママネットワーキングランチ」
  • ダイバーシティを全力で推し進める理由

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