リモート勤務は、基本的に週1回は誰もがしてよいことになっている。とはいえ、週に1回という縛りも、子どもが発熱したなどの事情があれば、柔軟に拡大することができる

 「何時間会社にいるかは、あまり意味がない。いかに集中して同じアウトプットを出せるかどうか。最終的なパフォーマンスが大事です。リモートワークしていてもSlackで常にコミュニケーションはとっています。ただやはり全部リモートだけでは回らないことが多いので、週に1回という制限はつけています。また、長く働き過ぎるのを避けるために、半年ほど前から土日はSlack禁止、というルールも作りました」(中村さん)

社員の悩みの解決策が制度として定着することも

People Divisionマネージャーの下司剛義さん
People Divisionマネージャーの下司剛義さん

 育児や介護などの両立施策についてはどうだろう。「個々のケースバイケースですね。育児や介護で『こういう状況があります』という報告があって『では、どうしたらいいですか』と一緒に考える感じです」(下司さん)

 出産する女性に関しては、「one on one」と呼ばれる、本人と、所属上司、社長との面談の場があり、復帰前に保活状況を確認し、育休前の働き方に戻すか、新しい就業時間、雇用形態に変更するのがよいか、可能となる形を協議し、サポートをしている。前編でも触れたが、同社には、週3~4日勤務の正社員や、業務委託などさまざまな立場の人がいる。

 企業理念(「人間としての原則を重視し、自分自身、家族、同僚、顧客、世界がWin‐Winであることを大事にします」)に立ち返り、本人の希望を大切にする姿勢を貫く。知恵を絞った結果、前編で紹介した中村さんのように「大阪支社を立ち上げる」という意外な解決策に至ることもある。

 さらに、社員から寄せられた悩みの解決策が社内制度として定着することもあるという。

 その一つが、2018年10月に始まった「スーパーリモート制度」だ。最大5日間の有休と、最大5日間のリモートワークを連続させられる(1年に1回のみ取得可能)。

 「2019年4月から法律が変わって、5日間の有休取得が義務付けられます。それまでも『子どもの長期休みに一緒に過ごしたい』という要望はありました。そして『ノルウェーにオーロラを見に行きたい』という希望を持っている社員もいました。この制度を活用すれば、最大2週間、遠方で過ごすことも可能です」と下司さん。

 実際に、この制度を使ってオーロラを見に行くという夢を叶えた社員から、美しいオーロラの写真がSlackに送られてきて、社内は大いに盛り上がったという。また、外国籍のスタッフが、帰国する際に使うなど、さまざまな利用のされ方をしている。

「緊急ではないが重要である」事柄にあえて取り組む

 もう一つ、同社のユニークさを如実に語る制度がある。希望者だけで、美術館に行ったり、皇居ランをしたりする「超第二領域」という制度だ。課外活動ではなく、業務の一環として参加する。2013年から導入しており、取材した週の金曜日も希望者7人でスキーに行く計画がある、とのことだった。

左から、常務取締役COOの中村研太さん、People Divisionマネージャーの下司剛義さん、People Division有馬さよ子さん
左から、常務取締役COOの中村研太さん、People Divisionマネージャーの下司剛義さん、People Division有馬さよ子さん