2011年に創業した、ウェブコンサルティング会社「プリンシプル」。同社の常識にとらわれない両立施策について、前・後編に分けてお届けする。前編では、「関西に戻りたい」という妻の希望に応え、会社に大阪支社の設立を提案。1週間を半分に分けて、東京と大阪で生活をすることで、家族それぞれの「幸せの軸」を大切にしている共働き子育てパパに登場していただく。

 プリンシプルの常務取締役COOの中村研太さんは現在、2歳の女の子のパパ。妻と娘は大阪に住んでいる。それだけ聞くと、「単身赴任」という言葉が想起されるが、予想外の物語が返ってきた。

プリンシプルの常務取締役COOの中村研太さん
プリンシプルの常務取締役COOの中村研太さん

 「今、1週間を24時間で見ると、ちょうど東京と大阪で半々の生活です。夜で考えると大阪に4泊、東京は3泊。日中で見ると大阪は3日、東京に4日。東京オフィスに週4日通い、大阪では主にリモートワークすることが多いですね」

 そもそも、関西出身の中村さん。妻も関西出身で、2人とも東京で就職したが、妻は「いずれ関西に戻りたい」という希望は持っていた。「妻の母親もずっと仕事を持っていて、妻自身は、祖母に面倒を見てもらって育ちました。妻は一生働いて、キャリアを作りたい、という考えを持っています。そのためには、自分の母親のサポートがあったほうが安心であるし、自分自身が祖母に育てられたのがとてもよい経験だったので、自分自身のキャリア形成と子育て環境のために出産後は関西に戻りたい、ということでした」

 妻が正社員として勤務する企業は、大阪にも支社があった。希望したところ、幸運にも育休明けから大阪に転勤できることになった。

 一方、中村さんは、妻の大阪での職場復帰に合わせて、「大阪支社の立ち上げ」を社長に提案。すると、すんなり許可された。

 「妻が実家のある大阪に戻りたいと言っている、どうしたらいいかと考えたけど、大阪支社を立ち上げて、大阪にも拠点を作りたい、と相談しました。大阪支社は、ある意味、私の個人的事情のために立ち上げたような感じです。半分以上はそうといえます」。そんな驚くべきことを、中村さんはさらりと言ってのけた。

自分と会社がWin‐Winであることを大事にする働き方

 その根拠は同社の企業理念なのだと中村さんは説明する。「個人が仕事を通じて夢や目標を実現することをサポートします」という一文が企業理念に入っている。

 「代表取締役社長で設立者である楠山健一郎自身もそうです。シリコンバレーなどに米国オフィスを立ち上げましたが、それは『グローバルに仕事をしたい』というのが、楠山自身の小さいころからの夢だったからです」

常に企業理念に立ち返るため、同社社員は「PRINCIPLE WAY」と表紙に記された、名刺大の小冊子を携帯している
常に企業理念に立ち返るため、同社社員は「PRINCIPLE WAY」と表紙に記された、名刺大の小冊子を携帯している

 「もちろん、前提として会社にもWinをもたらす必要はあります」と中村さん。企業理念の冒頭には「人間としての原則を重視し、自分自身、家族、同僚、顧客、世界がWin‐Winであることを大事にします」とある。ちなみに、同社社員は「PRINCIPLE WAY」と表紙に記された、名刺大の小冊子を携帯している。同社において、企業理念は極めて重んじられた存在で、毎日朝会で社員が企業理念を唱和する他、これを体現する本人のエピソードを1分間スピーチで披露する習慣もある。

 「関西にはもともとクライアントもいたし、市場もあるから認められた、という側面はあります。では、もしそれが例えば高知だったら実現するのか、ですよね」