子育てを経験した社員の「育児レポート」という財産

 「ひとつきいっしょ」の期間は、「休み」ではなく「仕事」であると社内で認識されている点も興味深い。育児用品を扱う企業として、「社員誰もが育児を語れる会社」にするための貴重な“研修期間”とも捉えられている。

 育児体験を「仕事力」につなげるための象徴的な取り組みが、「育児レポート」である。育児レポートは、「ひとつきいっしょ」の取得の有無にかかわらず、1歳6カ月までの子どもを持つ男女社員全員に提出が義務付けられている。 テーマや体裁は自由。自社製品を使ってみた感想や、保活や子育ての苦労話、現在の子育て環境が抱える問題点など、内容は多岐にわたる。

 人事担当役員である赤松さんがすべて目を通し、目標管理制度の1項目として評価をする。「最初は公園で他のお母さん方から『奥さん出て行っちゃったのかな』という疑いの目で見られた、でも最後にはお母さん方と仲良くなって、『いい制度だね、いい会社だね』と言われるようになった――そのようなエピソードもレポートにありました。読んでいると場面が浮かび上がってきます。この体験は一人ひとりの仕事にも活かされ、会社にとっても大きな力となっています」。提出された育児レポートはポータルサイトに掲載され、他の社員が読むことも可能だ。書いた本人や家族にとっての大切な思い出になると同時に、この蓄積が企業の掛け替えのない財産にもなっている。

育児レポートのテーマや体裁は自由。社員一人ひとりの着眼点が生かされる
育児レポートのテーマや体裁は自由。社員一人ひとりの着眼点が生かされる