数字よりも、「男女関係なく気持ちよく働けるように」

男性社員が1カ月間を有給で育児休業が取れる「ひとつきいっしょ」により、男性育休取得率は2015年から100%を達成(2015年からの3年間で32名が取得)
男性社員が1カ月間を有給で育児休業が取れる「ひとつきいっしょ」により、男性育休取得率は2015年から100%を達成(2015年からの3年間で32名が取得)

 数字や施策ありきではなく、社員を「個人」として見ていることが伝わってくる例がもう一つある。同社はその事業内容から、女性が多い企業のイメージがあるが、実は正社員では女性は3割しかいない。女性管理職比率は約15%。だが、女性管理職比率の目標数字を定めていない

 「正社員の男女構成比は7対3なので、将来的には女性管理職が同じように30%ぐらいでもおかしくないと思っています。でも、大事なのは数字ではなく、女性管理職を育てる仕組みをつくることです。目先の数字を上げるために女性だから登用するという考え方は、女性社員にも、降格されたり、昇格を阻まれたりするかもしれない男性社員にも失礼だと考えています」。赤松さんは力強く語る。

 「女性には本当に活躍してほしい。女性のライフイベントがハンディにならないように、様々な手段を考えています。社員の皆さんが気持ちよく仕事をし、気持ちよく出産を迎えられる、気持ちよく復職できる、大事なのはそこです。育児はお母さんだけがするものではなく、当然お父さんもするものです。1人で育児をするのではなく、社員みんなが応援しているよ、という姿勢を会社として示すことも大切だと思います」

 例えば、同社の代表的な施策に、「ひとつきいっしょ」という制度がある。男性社員は、子どもが1才6カ月になるまでの1カ月間を有給で休業することが可能。「男性も1カ月間育児に関わることで、育児の大変さを経験し、育児中の女性社員の大変さがより分かるようになってきました」と赤松さん。

「ひとつきいっしょ」がきっかけでより強い会社に

 なぜ「ひとつき」なのだろうか。制度の検討当時、育児中の女性社員から「1週間ぐらいでは、育児のつらさも楽しさも体験できない」と声が上がったことが決め手になったという。「やはり3日ぐらいでは分からないと思います。正直、1カ月でも足りないぐらいだとは思いますよ」と赤松さん。親しみやすい制度にするために、社員に公募をかけて名称を決めた。2006年の導入当初こそ取得率は30~40%だったが、その後は約25%にまで下降。現在の山下茂社長が「取得しない人がいる場合は、その理由を所属長から社長に報告すること」というルールを設け、トップダウンで本腰を入れた結果、2015年に取得率100%達成に至った。現在は取得するのが通例となっている。

 この制度の運用で、副産物もあった。「1カ月間の不在中、誰かが仕事をカバーしないといけません。既に取得した先輩社員が、率先して後輩社員のフォローを希望する、などみんなで業務を助け合うようになり、そのために協力し合って業務の効率化を図る姿も見られます。『ひとつきいっしょ』がきっかけで、よりよい、より強い会社になっています」