どうやって生まれた? 「おにぎりアクション」企画の開発秘話

―― 2015年からスタートした「おにぎりアクション」の企画も面白いです。この企画は、転職後に千絵さんがゼロから作り上げたものだと聞いています。

大宮 色々な人にアドバイスを頂きながら、まさにゼロから作り上げた企画が「おにぎりアクション」です。

 「1食の健康的なランチを食べると1食分の給食が寄付される」というシンプルな仕組みがTABLE FOR TWOの強みだと思うのですが、日本の食文化でシンプルなものって何だろうと考えたとき、それは「おにぎり」なんじゃないかと思ったんです。誰かのために愛情を込めて握るものだし、開発途上国の子どもたちに給食を届けるという支援にもぴったりだと思いました。この「おにぎりアクション」は、おにぎりの写真に「#OnigiriAction」とつけてSNSで投稿するだけで、5食分の給食がアフリカ・アジアの子どもたちに届けられるという仕組みです。SNSで参加してくれる人に対しての企業PR、ブランドイメージ向上、自社商品の購入に繋がることにメリットを感じた企業様が賛同してくれ、給食5食分に相当する寄付をしてくださいます。

 この給食というのも重要なところで、現地を視察したところ、栄養価の高い給食が支給されるTABLE FOR TWOの支援校では、生徒数が増えているんです。就学率が飛躍的に向上したという話で、もともとは学校にすら半分くらいのお子さんが来られない状況だったのですが、給食が出ることで、その食べ物を目当てに学校に来るようになったと聞いています。それまでは家族の労働力として必要とされていた子どもたちも、給食が食べられるなら、と学校に行かせてもらえるようになり、多くの子が学校に戻ってきて、100%近い就学率になったという話もありました。

 給食1食が命をつなぐだけではなくて、その子の教育とか将来にも繋がっているんだということを感じています。

―― 母親になってから転職を決意したということでしたが、出産を機に以前とは違う感情が出てきたり、気持ちが強くなったり、何か変化があったのでしょうか?

大宮 そうですね。やはり息子が産まれてからは、この子の将来ということを常に想像して、未来のことをよく考えるようになりました。この子が食べるものに困らず、幸せに暮らせることを強く願っているのですが、それは世界中のほとんどのお母さんたちも同じ気持ちだと思うんですよね。でも、生まれる場所が違うだけで、わが子に一食も与えられないという家庭が多い地域もあります。もちろん、日本でも貧困の問題はありますが、アフリカの貧困の問題はより深刻度が高い。やはり、生まれる場所が違うだけで、子どもの将来が変わってしまうという現状は何とかしたいと、以前よりも強く思うようになりましたね。

―― 3回目となる2017年の「おにぎりアクション」は11月15日までの実施となっていました。

大宮 2017年は、42日間で16万425枚のSNS投稿があり、約100万食もの給食を届けられることになりました。昨年も、世界中から36万人の方に参加いただき、優れたマーケティング企画であるとして「日本マーケティング大賞 奨励賞」、「アジア・マーケティング・3.0アワード」を頂きましたが、2017年は前年よりもさらに多い寄付となり、約4500人の子どもの1年分の給食となります。

 TABLE FOR TWOはNPO法人で、頂く寄付金の8割は給食として支援先に届けるため、マーケティングにかける費用はありません。InstagramやTwitterを通じて、個人の皆様がアンバサダーとなり、このアクションのことを世界中に広めてくださいました。

 おにぎりアクションは日本の食を通じて世界を変える取り組みです。このように日本の良さを通じて世界を良くする取り組みが広まり、世界的に評価されたことを、とてもうれしく思っています。

藤村美里さん
藤村美里さん