言わずと知れた人気スタイリスト、大草直子さん。ウェブマガジン「mi-mollet(ミモレ)」のコンセプトディレクターをはじめ、様々な場で活躍する一方、プライベートでは、高3の女の子、中1の男の子、小2の女の子と3人のお子さんがいる母親でもあります。

 ベネズエラ出身の夫や子どもたちとの私生活はもちろん、名門国立附属からの大学進学、離婚や再婚、そして新たな選択と決断……どんな場面でも潔い“大草流の生き方”について、直球で語ってくれました。

高3の娘にも伝えた“大草直子のキャリア観”

藤村さん(以下、――) 大草さんのインタビュー記事を読むと、どんな状況下でも諦めずにキャリアを積み重ねてこられたという印象があります。その根底にはどのようなマインドがあるのでしょうか?

大草さん(以下、敬称略) 今、一番上の娘は高校3年生で、目標とするキャリアから逆算して大学選びをしている最中です。先日、2人でごはんを食べに行ったときに「ママのキャリア観を聞かせてもらいたい」と言われました。そのとき、彼女にも話したのですが、私がキャリアについて考えていること、求めていることは3つあります。

 1つ目は「自己実現」。自分がやりたい仕事を、100~120%の力を出して実現していくということです。やはり一番やりたい仕事をやるということはモチベーションに繋がりますから、自分の夢を叶えて、やり遂げるということが大事です。

 2つ目は「社会貢献」。これは、寄付するとか奉仕するということではなく、誰かにとってプラスになる仕事をするということ。私の場合は、もちろん“ファッション”を伝える仕事ですが、これは全ての女性にオシャレになってほしいということではなく、「今を生きるストレスフルで大変な女性たちが楽になればいい」と思っています。

 イベントをやったり、コラムを書かせてもらったり、色々な仕事をする中で、一番嬉しいフィードバックは「大草さんの本に出会って、オシャレが楽になりました」という言葉。これが私にとっての社会貢献だと思っています。

 3つ目は、「生きていくため、生活のためにお金を稼ぐ」ということ。どんな仕事であれ、生きる糧として必要なのですから、お金のために働くということは恥ずかしいことではありません。

 娘には、仕事を決めるときに、何となく「生涯賃金」をイメージしなさいという話もしました。お金が沢山あるからといって幸せになれるとは限らないし、お金がないから不幸せということでもない。でも、一生にどのくらいのお金があれば、自分が幸せでいられるのか。そして、その計算には彼氏や夫などの他者は入れず、自分が必要な分は自分で稼げるようになったほうが良いということも伝えてあります。

 私は、この3つを考えながら仕事をしています。「働かない」という選択肢は、考えたこともないんですよね。仕事を辞めようと思ったことは一度もないし、死ぬ間際まで仕事をしていたいと思っています。

―― キャリア観について話をされたときの、お嬢さんの反応はいかがでしたか?

大草 仕事というもの、働くということ、お金を稼ぐということについて、折に触れて話してきたので、「あぁ、今まで言ってきたことをきれいにまとめたね」という、普通の反応でした(笑)

 わが家の子どもたちには、「人生は全て選択と決断の連続」だという話をしたうえで、小学生のころからできるだけ本人たちに決断させるようにしているんです。毎日の洋服選びから、何から何まで。どこでどんなことを学びたいのかも、子どもが“自分で選ぶ権利”を大人が取り上げないように心掛けています。

 だからなのか、3人とも、自分で選択するのが早いようで、中1の息子は米国で勉強すると自分で決めて、今年は米国で学んでいますし、高3の娘も、高校に入学したころから「勉強が好きだから修士まで学んで、将来はこんな仕事に就きたい」ということを臆せずに言っています。私が再婚したとき3歳だった長女は、一緒に新しい家族を作っていく一員でもありました。その経験は、今、彼女がキャリアを考えていく際にも、生きているような気がします。

「私がキャリアについて考えていること、求めていることは3つあります」(大草直子さん)
「私がキャリアについて考えていること、求めていることは3つあります」(大草直子さん)