こんにちは、旅行ジャーナリストの村田和子です。今回の旅育裏側探検隊では、産官学を巻きこみ、子どもたちの学びの場を創造するNPO法人CANVASをご紹介します。ワークショップなどの活動を通じて目指すのは「子どもたちがコミュニケーションを通じて協働し、新たな価値を生み出す世界」。設立は2002年と15年以上も前に遡り、以来、子どもの学びの場を創造し普及する活動を支え続けています。今回は、NPO法人CANVASの設立者であり、理事長の石戸奈々子さんにインタビュー。CANVASへ託した思いやこれまでの歩み、また、変わりゆく未来を生きる子どもたちのために、大人が何をすべきかを聞きました。

子どもたちの持つ“求心力”で、産官学が集結

 「これからを生きる子どもたちに必要な力は、世界中の多様な価値観の人と協働して新しい価値を作ること。そのために、創造力やコミュニケーション力を育む学びの場を作る活動を推進しています」と、石戸さんは設立時の思いを語ります。

NPO法人CANVAS理事長の石戸奈々子さん
NPO法人CANVAS理事長の石戸奈々子さん

 海外十数カ国で子ども向けの教育施設を視察すると、学校外の学びの場が充実していることに驚いたといいます。

 「学校や家庭だけに任せるのではなく、産官学を含め多様な主体が連携した学びの場を、作りたい」そんな思いが形になり、CANVASは、現在様々な事業を展開しています。中でもCANVASの核となる、約150のワークショップが一堂に集まるイベント「ワークショップコレクション」は、2004年に初めて開催したときには500人だった参加者が、2日間で10万人を超える来場がある一大イベントに成長しています。

 産官学連携といっても、言うは易く行うは難しいこと。成功の秘訣を伺うと、意外にもあまり苦労を感じたことはないという答えが返ってきました。

 「私たちの活動が、未来を担う子どもたちを支える取り組みだからかもしれません。多くの人が子どもたちのために、何か取り組みたいと思ってくれています。CANVASの活動には多くの方が自然と手を差し伸べてくれてきました。子どもたちの持つ“求心力”が活動を支えてくれていたと感じます」

 もう一つCANVASの活動で特徴的なのが「日本全国の子どもたちに届けたい」という思いから、各地域が中心となり活動が展開するしくみを作ることを重視し、普及を促す下支え役に徹するという点です。

 「CANVASは各地に点在する取り組みをつなげ、面的な活動にしていくプラットフォームです」と石戸さん。具体的な手伝いの内容は、ケースバイケースとのことですが、カリキュラム提供や運営支援はもちろん、実施するためのコミュニティーづくりから参画することもあるといいます。

 今でこそワークショップは人気ですが「スタートした2002年には、ワークショップという言葉自体も一般的でなく、『それって何のお店?』『創造力を育むとは、アーティストを育てたいの?』なんて言われることも多く、一から啓発が必要な状態でした」と当時を振り返ります。

 それでも思いを形で示すことでCANVASの目指すべき世界観に多くの方が共感し、「子どもたちの持つ求心力」に助けられ、今の成長につながっているといいます。

「ワークショップコレクション」は2日間で10万人を超える来場がある一大イベント
「ワークショップコレクション」は2日間で10万人を超える来場がある一大イベント