こんにちは。旅行ジャーナリストの村田和子です。前編に続き、旅育裏側探検隊は、東京スカイツリータウン内に2012年5月に開業した「すみだ水族館」にフォーカスします。コミュニティ創造の場として誕生した「すみだ水族館」の裏側には、様々な取り組みがありました。中でも、エデュケーションとエンターテインメントを合わせた「総合エデュテインメント型水族館」としての取り組みはユニーク。館内見学の模様を交えながら、オリックス水族館株式会社代表取締役の三坂伸也さんのインタビューを紹介します。家族はもちろん、時には一人で、あるいは夫婦で出かけてみてはいかが?

<上編はこちら> 街中の「すみだ水族館」 目指すは公園のくつろぎ感

飼育スタッフ、舞台演出家から指導も

 館内を見学していると、にぎやかな声がしてきました。マゼランペンギンへのごはんの時間が始まったのです。100%人工海水の大きなプールでは、赤ちゃんの誕生なども経て、現在55羽のマゼランペンギンが飼育されており、24時間この水槽で暮らし、様々な素顔をのぞかせ楽しませてくれます。

 すみだ水族館のごはんの時間は、数名の飼育スタッフがごはんのアジを一羽一羽手渡しであげていき、食べたペンギンの名前を伝えます。「〇〇〇は2匹食べたよ」とごはんをあげた飼育スタッフが言えば、記録担当の飼育スタッフはそれを復唱してメモし、どのペンギンが何匹食べたかをチェック。そして「まだ食べていない子の名前を言うよ」とフィードバックすると「ひまわり~。まだ食べていないよね。おいで~」とペンギンへと語りかけます。人と人、人とペンギンの活気ある軽快なコミュニケーションに思わずお客様も引きこまれ、くぎ付けになります。実はこの光景にも、裏側がありました。

 「見るから感じるというコンセプトの下、すみだ水族館と京都水族館では、飼育スタッフに、コミュニケーションデザインについて舞台演出家の先生に指導をしてもらっています」と三坂さん。生き物への思いをどう表現するか、また、お客様が話しかけやすい雰囲気づくりなど、内容は多岐にわたるといいます。

 「エデュケーションとエンターテインメントを合わせた総合エデュテインメント型水族館をコンセプトにしていますが、両者の役割は異なります。水族館はあくまで『エデュケーション』が軸であるべきだし、うちの水族館でいうエデュケーションは、生き物の知識よりもコミュニケーション、人づくりだと思っています。それを積極的に働きかける手法としてエンターテインメントが重要だと考えてのことです」と三坂さん。

活気あふれるペンギンのゴハンの時間(すみだ水族館)
活気あふれるペンギンのゴハンの時間(すみだ水族館)
京都水族館のイベントの様子(2016年開催:親子いきもの探偵団)
京都水族館のイベントの様子(2016年開催:親子いきもの探偵団)