一組の親子連れから、コミュニティとしての水族館の可能性を発見

 人々が集う公園のような水族館として、新江ノ島水族館も無事にオープン。いつものように、最寄り駅から水族館に向かうお客様を眺めていると、あるお父さんと小学生の娘さんの親子連れに目が留まったといいます。

 「入館前から一言も会話がなく、もちろん楽しそうな様子もない。わが家にも同じ年ごろの子どもがいたので、気になって館内でも様子をうかがっていました。相変わらず近くにいながら一切言葉を交わさない。娘さんも思春期で難しい年ごろなのかなと思っていると、大水槽の前で雰囲気が一変しました」と三坂さん。

 エイがイワシの大群にぶつかり、イワシが一斉に散る迫力あるシーンに、お父さんと娘さんが一緒に「すごいね!」と声を上げ、一気にそれまでの緊張が解け笑顔になったといいます。

 「それを見て、水族館での体験が気持ちを変化させ、心が通うきっかけになるのかもしれないとも思うようになりました。イルカのショーなど感動的なシーンでは、知らないお客様同士が言葉を交わすことも少なくありません。コミュニティの核としての水族館の価値を感じる出来事でした」

 不動産事業では、「街のコミュニティ」という言葉がよく使われるが、なかなか具現化するのは難しいと感じることもあったという三坂さん。水族館ならば、もっと積極的にコミュニティの創造を実現できるのでは?と考え、一番それを必要としている都心に着眼。海沿いではない「あえて街中」に水族館を作ることへかじを取ったといいます。

水族館では迫力あるシーンを目にして、思わず会話が生まれることも(京都水族館)
水族館では迫力あるシーンを目にして、思わず会話が生まれることも(京都水族館)
水族館をコミュニティの創造の場に(すみだ水族館)
水族館をコミュニティの創造の場に(すみだ水族館)