子どもが犯罪被害に遭わないために親が知っておくべき知識について、地域の安全や犯罪予防を研究する小宮信夫立正大学教授が、実際の事件や事故を基に検証しながら解説する連載。今回は、SNSでの犯罪被害を防ぐために知っておくべきことについてお話を聞きます。

SNSの投稿が殺人のきっかけを生む

――昨年10月、座間で起きた連続殺人事件は大変ショッキングでした。この事件で殺人犯と被害者を結んだ接点はSNSでした。こういった危険から子どもの身を守るには、どうすればよいのでしょうか。

 SNSがらみの事件は、街中で起きる事件とは違うように見えますが、実は原則は同じ。これまで連載でお伝えしてきた「危ない場所を見分ける2つのキーワード」がカギになります。

・入りやすい場所
・見えにくい場所

 では、SNSにおいての2つのキーワードについて考えてみましょう。

 まず、「入りやすい場所」についてですが、「入りやすい」とは、誰でも自由に参加できるということです。身元を明かして審査を受け、それにパスしないと参加できないようなサイトであれば、「入りにくい場所」と言えます。

 一方、ハンドルネームで会員登録できたり、身元を隠したままで書き込めたりするようなサイトは、「入りやすい場所」。アクセスできるサイトを制限するフィルタリングソフトを使えば、多少入りにくくできますが、それにも限界があります。

 次に、「見えにくい場所」ですが、お子さんがスマホを使ってSNSで書き込みをしても、親がそれをすぐに察知することはできませんよね。SNSに匿名やハンドルネームで参加している人は、実際はどんな人だかさっぱり分かりません。優しい言葉をかけてくれる人が、実際には子どもを狙った常習犯かもしれません。

 書き込みをしている個人を特定できないサイトは、「見えにくい場所」と言えます。なりすましやアカウントの乗っ取りなどが可能なSNSは、基本的に「見えにくい場所」なのです。

 

 こういう場所は、前回の記事(城壁都市から学ぶ「安全」な場所と「危険」な場所)でいうところの「城壁の外」に当たります。城壁の外は常に危険にさらされているので、安心していてはいけませんでしたね。そこには、犯罪が成功しそうな誘惑がたくさんあり、犯罪者たちは獲物を探し回っています。

 ですから、そんな場所で安易に助けを求めると、親切な人の目に留まるだけでなく、犯罪者につけ込まれるきっかけにもなりかねません。犯罪者のターゲットにならないように、自分の発言には十分気を付ける必要があります。