“幸せな不自由”を得てみて
さまざまな葛藤はあるものの、夫がいて子どもがいるという幸福感は何物にも変えがたいことです。仕事人間だと暗示をかけていたのは私自身。家庭をもつことがこんなに幸せなことだとは! それに「あれ、私って案外家庭的だったりする?」なんて、娘とクッキーを焼きながら自分の意外な一面を発見したりします。
“自由”とは好き勝手してもいいということではなく、責任のもと自分の意思で選択できることをそう呼ぶならば、私は家庭をもつことで“幸せな不自由”を得たのだと思います。特に子どもがいると自分の意思だけでは決められないことがたくさんあります。
一般的には義理の実家との付き合いも“妻の不自由”の一つとされていますが、この点において私は恵まれました。特に義理の姉には先輩ママとして全面的なサポートを受け、孤独な育児でくじけそうなとき何度も救ってもらいました。ただ、義実家に帰った夫は“息子”に戻ってしまうのも事実です。
そして子どもに恵まれたことで得た大きな財産。それが“ママ友”です。大人になってからここまで時間と感情を共有できる友達をつくるのは難しいのではないでしょうか。新潟が地元のママ友、転勤族仲間のママ、それぞれいつか離れ離れになっても長い付き合いになると思っています。
ただ、家庭をもつことで“幸せな不自由”を手にすると分かっていたら、独身時代の過ごし方をもっと質の高いものにできたかもしれません。例えば学びの時間にあてたり、遠方の友人に会いに行ったり旅行をして見聞を広げたりするなど。もうちょっと節制してたんまり貯金もしておけばよかった、なんて。
独身時代と家庭をもった今、どちらが幸せか?
SNSで見かけるようなスタイリッシュなインテリアや洋服じゃなくても、ここが最先端の都内じゃなくても、時に泣いてぶつかりあっても、「幸せの尺度」がすっかり変わってしまった今の私には、答えは「言わずもがな」です。
今、子どもたちの母親であり妻という唯一無二の存在になれたことのほうが心を安定させています。
でも…、やはりモヤモヤする気持ちは心の中に残りました。そう、それは“働く”に関することでした。
コラムニスト