夢トークを終えて

 安永さんは、いつも最初のゲームの時間で子どもたちの表情やクラス全体の雰囲気を瞬時に判断して、その日のトーク内容のテーマを決めているという。

 「子どもたちがどういうポイントで反応するのかをいつも見ていますが、体育館でゲームをしながら失敗という言葉を使ったところでけっこう子どもたちが食いついてきたので、そこを軸に今日は夢トークをしようと決めました」(安永さん)

 子どもたちの反応についても、「僕は子どもたちが盛り上がっちゃって反応があり過ぎると脱線してしまうタイプなので(笑)。そういう意味では、あまり脱線することなく、程よい感じでテンポよくトークできたのではないかと思います」と言った。

 以下は、子どもたちと夢先生、安永さんとのやり取りが記された夢シートの一部だ。

 今回、掲載している夢シート以外も読んでみたが、子どもたちは安永さんの話をよく聞き、理解していたという印象。誰一人として雑談することなく、集中していた。夢を持って、それに向かって“生きる力”となる種が、子どもたちの心にまかれたのではないだろうか。

 ジャイアンと呼ばれるほど強気だった安永少年が、何ごとも続かない自分は弱い人間だと気づき、再びサッカーを始めた。失敗を恐れずに挑戦することで成長する楽しさを知り、プロサッカー選手になるという夢を抱き、目標を立てて階段を上っていく。そして、高校卒業と同時に夢をかなえた。

 ところが、ようやく夢をかなえたというのに感謝の気持ちを持つことができず、傲慢なジャイアンに逆戻りをしてしまう。将来を有望視されていたその実力からすれば、安永さんのサッカー人生は決して順風満帆とはいかなかった。ある意味、失敗とも言える話をさらけ出し、再び夢に向かって突き進んでいる安永さんのリアルな体験に基づく夢トークだからこそ、子どもたちの心に響いたのではないだろうか。

(取材・文/國尾一樹)