せっかく夢をかなえた安永さんの夢曲線がどんどん下降していく話を聞きつつ、子どもたちはみな、『えー!?』と、驚きを隠さず叫んだ。

 「そんなことをしていると、どうなるか。どんどん、どんどん、夢曲線は落ちていってしまった。何にも行動しなくなってしまったし、人に対してありがとうっていう気持ちがなくなると、自分の周りからどんどん人がいなくなる。そんなことをしていると、人に対して感謝をしない人たちばかりが集まってくるようになるんだよね。要は、人の悪口ばかり言うようになるわけ」

 「やっさんは、『オレを試合で使わないなんて、監督が悪い!』と言うと、「そうだ、監督が悪い!」って仲間が言う。そんな、人の悪口や文句ばかり言うヤツらが集まってくる。頑張ってるヤツらは、決して近寄らない。当たり前だよね。一生懸命頑張ってるのに、グチグチ文句ばっかり言うヤツがいると嫌でしょ? とにかく、やっさんはそんなふうになっちゃって、そこからずーっと抜け出せず、結局、29歳であんなに大好きでずーっと頑張ってきて、やっと達成したプロサッカー選手という夢の舞台から29歳で引退してしまいます」

 子どもたちがシーンと静まったなか、安永さんは続けた。

 「こんなことになってしまった理由としては、もっと細かいお話もあるけれど、大まかに言うと、こういうことだった。ここでやっさんの夢トークが終わっちゃうと、なんだ、この人って話になっちゃうよね(笑)。でも、今は頑張っています! この後にいろんな経験をして、気づいたことがあって、今はしっかりと新しい夢に向かって進んでいます!」

“失敗と友達”になって、一歩ずつ成長して

 29歳の引退後から、再び上昇曲線を描きながら、安永さんは夢トークを続ける。

 「やっさん、引退する前にスペインに行って、サッカーも含めて、スペインってすごく面白い国だなあって思った。だから、いつかスペインでプロのサッカーチームの監督をやりたいと思った。日本人でスペインのプロチームで監督をした人はまだいないからね。それで、2年前に指導者になるために挑戦しに行ったんだけど、ものの見事に跳ね返されちゃった」

 挫折を味わったが、スペインのクラブで監督になるという夢に向かって、現在は、日本でJ3の「SC相模原」の監督に就任した。

 「JリーグにはJ1の下にJ2があって、その下にJ3があるけど、縁あってJ3のチームの監督から始めました。まずはJ3で監督として頑張って、J2、J1の監督になれるように一歩ずつ歩んでいって、最終的にはスペインで監督として挑戦したいなって思っています!」

 現在のSC相模原は思うような成績を残せていない。戦績の話をすると、子どもたちから「ヤバいね!」という言葉が飛んだ。

 「そうそう、ヤバいだろ!? まだまだヘッポコ監督だよな(笑)。このままだと、次のステージに上がっていけないから、もっと頑張っていかないといけない。まあ、大変だよ! でも、夢って諦めたら終わりだからね

 最後に夢や目標を持って生きることの大切さを安永さんは語る。

 「プロのサッカー選手になって、やっさんは失敗しちゃったけれど、なぜ、引退後も夢や目標を持って生きていきたいと思っているのか。それは、いろんな人にまだ返しきれていないからなんだ。しっかりと感謝の思い、自分が1つずつ頑張っていって、達成することによって感謝の気持ちを示したいなあって思っている。だから、みんなも自分の好きなことや夢、目標が見つかったら、自分で1つずつ階段を決めていって、諦めず、そこに向かって挑戦してほしい。失敗を恐れないでほしい。失敗を恐れてしまうと、プロになってからダメになったやっさんみたいになっちゃうからね。頑張っている人にどんどん追い越されちゃうから。いい挑戦を続けて、いい失敗をたくさんする。“失敗と友達”になって、一歩ずつ、成長していってほしいなって思います

 安永さんの夢トークはこう締められた。

 「一番、大事なのは、感謝の気持ちだね。今からでも必ず誰でも持つことができるようになるものだし、家族にだって友達にだって、先生にだって『ありがとう』というひと言が言えるようになれば、いろんな人間関係が変わってくるから。だから、皆さんもいい人間関係を築いていってほしいと思います! これで、やっさんの夢トークは終わりにします。ありがとうございました!」