夢を語ることで、何かがつながることもある

 子どもたちが書き終えたところで、「せっかくなので、前に出てきて、自分の夢や目標を発表できる人、してみたい人いる?」と安永さんが言う。しかし、誰も手を挙げない。

 「分かるよー、分かる! ゴメン、ウソ(笑)。ぜんぜん分かんない! オレ、どっちかというと前に出たがりだったからさ。こういうものって、人に強制されるものじゃないし、無理にやれとも言わない。ただ、自分の夢だったり目標だったりを周りの人に言い続けて聞いてもらうことによって、つながることもあるんだよね。すべてがそうだとは言わないよ。でも、『あれ? そういえばあのとき、アイツああ言ってたなあ』とか。例えば、『今日、テレビで恐竜の番組やるけど、アイツ、恐竜好きだって言ってたから教えてやろう』とか。で、その友達が番組を見ていたら、恐竜に詳しい大学の先生が出ている。『この先生、面白いな。じゃあ、僕はこの先生がいる大学に行こう!』っていうふうに道が見えてくるかもしれないよね」

 「キッカケって、いつ、どこに転がっているか分からないし、どこでどうつながるのか全く分からないよね。でも、誰にも何が好きだとか何が夢だとか言わないで、こもっているだけだったら何も始まらないよね? さあ! もう1回だけ聞くよ! 自分のなかで、僕、私、恥ずかしいけど、ちょっと一歩、踏み出してみようかなって思う人!?」

 そっと1人だけ女の子が手を挙げると、「○○が今、一歩を踏み出してくれます! みんな、聞いてあげてください!」と安永さん。恥ずかしそうにしながらも女の子は、「えっと……、なでしこリーグのチームに入って、プロの選手として活躍したいです!」と夢を発表した。そのためにやってみようと思うことに関しては、「毎日の努力を続けて、まずは県で1位になりたいです!」と力強く言った。

 「さあ、1人が発表したら、僕も私もと、勇気をもらって一歩を踏み出せる人が出てくるものです! 行く人いる?」と、再び安永さんが呼びかけると、2人の男の子が元気よく手を挙げた。

 「僕の将来の夢は、プロ野球選手になって、大谷翔平を超えるような選手になりたいです!」

 「僕の将来の夢は、文房具のペンを作る職人になって、世界で一番キレイに輝くペンを作る人と言われるようになりたいです!」

 2人の発表が終わると、安永さんは言った。

 「大谷選手って身長2mくらいあるよね。好き嫌いしないで何でも食べるって言ってたから、好き嫌いなく食べて頑張ってな! 文房具もね、この前、テレビでデザインがかわいい鉛筆がすごく売れてるっていう話をやってたよ。人と違うモノを作って、世界中で売れるようなすてきな文房具ができるように、みんなとアイデアを共有できるといいね。こうやって友達の夢を聞くと、『へぇ~!』って思うし、僕も私も頑張ろうって思えるよね。はい、拍手!!」

夢をかなえてからのやっさんに足りなかったモノ

 高校を卒業してからプロサッカー選手という夢をかなえた安永さんだったが、そこで夢曲線の大きな下降線を描きながら、夢トークは続く。

 「やっさん、夢であったプロサッカー選手になりました。ただ、プロになった後、こんな感じで夢曲線はズーンと沈んでしまって、29歳で引退してしまいました。何があったのかというと、これまで失敗すること、チャレンジすることをいっぱいやってきたのに、それが嫌になりました」

 何が変わってしまったのか、安永さんは自戒しながら語る。