以前、4回にわたってお伝えした「JFAこころのプロジェクト『夢の教室』」。スポーツ選手として活躍したアスリートが「夢先生(ユメセン)」として全国の小中学校に派遣され(主に小学5年生・中学2年生対象)、夢を持つことの素晴らしさや努力すること、仲間と協力することの大切さを夢トークで伝え続け、この10年で実施回数は延べ1万回を突破。夢の教室に参加した子どもの数は30万人以上にのぼっています。実はこの夢トークは子どものみならず学校の教師や保護者にも好評で、ぜひ聞いてみたいという要望が多いので、夢先生のトークを誌上実況中継する連載をスタートします。

 第1回目は、静岡県伊豆の国市立韮山南小学校の5年生のクラスで開催された夢の教室の模様を2回にわたってお伝えします。今回の夢先生は、夢の教室の草創期からプロジェクトに関わり続け、夢先生だけでなくアシスタントとしても経験豊富な元Jリーガー、安永聡太郎さんです。

今日のユメセン・安永聡太郎(やすながそうたろう)
 

山口県出身。高校サッカーの名門・静岡市立清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験。U-20日本代表に選出され、FIFAワールドユース(現・U-20W杯)に出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入。1年目から主力として活躍し、優勝に貢献。翌1997年にスペインのレリダに移籍して、34試合出場4得点。1999年に清水エスパルスに加入し、Jリーグ・セカンドステージ優勝に貢献した。2001年に横浜F・マリノスに戻り、2002年に期限付き移籍で再びスペインへ。1年間、ラシン・デ・フェロールでプレーした後、横浜F・マリノスに復帰。2005年に柏レイソルに移籍して現役を引退。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。5児の子だくさんパパ。

失敗のなかに成功の秘密がある

 夢先生による「トークの時間」の前に体育館で行われた「ゲームの時間」。夢先生が子どもたちと体を動かしてゲームをすることで、緊張をほぐすとともに、クラスの団結力を高めるゲームをしながら夢先生との距離を縮めることが目的だ。

 本日の夢先生は、元Jリーガーの安永聡太郎さん。この日は、「やっさん」と呼ばれることになって、アシスタントの川股要佑さんと共にリフティングやボールを強く蹴るデモンストレーションを披露。子どもたちから歓声があがると、安永さんはこう言った。

 「ボールはパワーがあるほど飛ぶ。ただし、どう蹴ったら真っすぐ飛ぶんだろうとか、どう蹴ったら曲がるんだろうというのは、練習をいっぱいして考えてやんなきゃいけない。そのなかには、いつも失敗が必ずあるんだね。いつもいるんだよ、“失敗さん”が(笑)。失敗は嫌だけど、仲良くならないといけない。なぜなら、失敗のなかに成功の秘密があるから。それを見つけるにはどうしたらいいのか、そんな話を後でしますね!」

 ゲームの時間でクラス全員が盛り上がった後、子どもたちが集まって「まとめの言葉」を言う安永さん。

 「一人ひとり、元気があって一生懸命だったし、勝つぞっていう気持ちが素晴らしかった。ただ、チームでやろうとすると難しいよね。チームが勝つためには、みんなが頑張らないといけない。1人だけでやろうとしてもなかなかうまくいかないから。そういうことを感じて、やっさん(安永さん)はプロのサッカー選手になりましたっていう話を、この後のトークの時間に教室でしたいと思います!」

夢先生・やっさん少年のあだ名は?

 体育館から教室に戻ると、夢トーク開始。まずは安永さんの現役時代の映像が流れたところで、自ら解説をする。

 「はい、やっさん、移籍して清水エスパルスの選手として出場した試合の映像です! トーンとボールを止めて振り向きざまにシュート!! この試合はね、勝ったらリーグ初優勝という試合だった。1対1の同点の場面でやっさんがゴールを決めて2対1でリード。そのまま優勝してね。サポーターもチームメートもみんな喜んだ!」

 アトランタ五輪のアジア予選で日本代表で活躍した様子も紹介されると、子どもたちからは、「スゲー!」「おおー!」などと歓声が上がった。

 「今日のテーマは……、やっさん、字は下手くそなんだ。でも、自分なりに丁寧に書くから」と言いつつ、赤いチョークで黒板の真ん中に丁寧に大きく、「夢」と書いた。

 「やっさんは、プロのサッカー選手になりたいなっていうのが夢でした。夢になるには当然、サッカーを始めないといけないんだけど、じゃあ、サッカーを始める前のやっさんは、どんな人間性、カンタンに言うとキャラクターだったでしょうか? マンガで言えば『ワンピース』だとか『ドラゴンボール』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』とかあるよね。今言ったマンガのなかに出てくるそのまんまのキャラで、あだ名もそれでした。さあ、誰だと思う?」

 子どもたちからクリリン、のび太、ドラえもん、ジャイアンなどと名前が挙がったところで、安永さんが言った。

 「ジャイアン! 正解!! やっさんは、リアルなジャイアンでした(笑)。この前の映画で公開されたときのジャイアンじゃなくて、普段の意地悪でどうしようもなく、ワガママで威張り散らしているジャイアン。まさしくあんな感じだった。やっさんの通っていた小学校はひとクラス40人以上でひと学年に8クラスで330人以上いるようなマンモス校だった。そのなかで、ひとクラスじゃなくて、学年のジャイアンだったんだね(笑)」

 「小学校1年生のときに運動会で6年生のお兄さんのところに行って『オレにアンカーやらせて!』って言ったくらい。大したもんだろ!? 『うるせーよ、向こうに行け!』って言われたけどね(笑)。それくらい、オレがオレがっていう感じのジャイアンだった」