「たまたま自分の前にいた友達が、ズドーンって蹴って豪快なシュートを決めた。それを見た瞬間、コイツ、すっげーカッケーなあって思った。『のび太、やるじゃねえか。これはジャイアンもやるしかねえだろう!』って思いっきり蹴ったら、ズドーンってゴールに突き刺さった。その瞬間、『おお、オレ、うまくなってる。オレってスゲー!』と思ってうれしかった。でも、次も強く蹴ったら外れちゃった(笑)。しょうがないから、ダッシュして戻ってくるわけだね(笑)」

 安永少年は、次も強く打つべきか、確実に入れるために弱く打つべきか迷った。

 「最初にズドーン!って強烈なシュートを決めたときの喜びがあったわけ。達成感って分かるかな? 『やったぜー!』っていう心の底から出てくるような喜びをまた味わおうとするのか、それとも、チョロチョロと適当にやるか……。外すとダッシュがあるし、どうしよう、どうしようと思っているところにボールが転がってくる。最終的に『オレはさっきの喜びが欲しい〜!』と思って、ズドーンって蹴ったけれど、また外れてダッシュするわけ(笑)。その後も思いっきり蹴って、入ったり、入らなかったり。でも、それを続けているうちに、うまくシュートを打てるようになるには、失敗を何度もしていかないといけないなって思うようになった

失敗するから成長できる

 安永さんが「失敗するって、どういうことか分かるかな?」と聞くと、「挑戦すること!」と子どもたちから返ってきた。

 「そう! 挑戦すること。チャレンジすることによって、初めて失敗があるんだよね。毎日、学校に来て『1+1は?』ってばかりやっていたら、達成感なんてないし、面白くないでしょ? 挑戦をして失敗するからこそ、自分が成長できて楽しいんだということが分かった。それからはもう、サッカーが好きになり、さらに大好きになっていった。そして、『オレはもうサッカーが好き過ぎる。大人になってもずっとサッカーがやりたいから、プロのサッカー選手になろう!』と思った。まだ、Jリーグがないから、国内ではプロのサッカー選手にはなれない時代だったけれど、それでもプロのサッカー選手になりたいと決めたのが、小学6年生の夏のことでした!」

 そこまで話すと、安永さんは夢シートを開くよう指示して、項目の3番「いま好きなことや得意なこと」と、1番「将来の夢」を書くように促した。

 「ここでみんなの時間です! 3番の、好きなことから書いてもいいかな。自分が今、好きだったり得意だったり、面白いなあと思っているもの。何でもいい。こんなことやってると楽しいとか。好きなこと、得意なことを3番に書いてください。やっさんはサッカーが大好きになって、そのまま夢になった。でも、夢と好きなことは違ってもいいよね。それはみんなそれぞれに違うと思うので、自分が今好きなこと、得意なもの、やってて面白いと思うものが書けたら、1番のところで、夢としてはこんなことをやってみたいな、大人になったらこういったことに挑戦してみたいなって思うことを書いてみてください!」

 プロのサッカー選手になるという夢を見つけた安永少年の話を聞いた子どもたちは、みな真剣に夢シートに書き込んでいった。