クラスみんなが同時に「ミラクルパワー!」と大きな声で応えた。

 「そう! ミラクルパワーだよね! 『つまんないなあ、やりたくないなあ』って思っているとミラクルパワーって出ないよね。みんなは今日、体育館で見せてくれたようにたくさん仲間がいるんだから、一緒にいいパワーを出し続けていこうよ! シッキーも仲間と一緒に乗り越えてやっていきたいと思います。今度はコーチとしてテレビに出ることを目標にして、夢を持って頑張っていきます。テレビにシッキーが出ることがあったら、ぜひ、応援してください。そして、みんなも頑張ってください! では、これで終わりにします。ありがとうございました!」

トークの時間の前には、体育館でゲームの時間を楽しんだ
トークの時間の前には、体育館でゲームの時間を楽しんだ

夢トークを終えて

 夢トークを終えたばかりの式田さんに、控え室で率直な感想を聞いてみた。

 「子どもたちのゲームの時間の体育館でのいい表情と、夢トークのときの教室でのいい表情と、2つを見ることができたことがすごく幸せでした。体育館では笑顔で楽しんでいるけれど、真剣さが伝わってきました。夢トークのときには、シッキーの話を自分に置き換えて聞いてくれているのかなあと感じました。自分と重ねて想像しながら、いろんな表情を見せてくれていたと思います」(式田さん)

 式田さんはこのプロジェクトが始まった10年前から夢先生を務めていて、夢授業の回数は200回近くという大ベテラン。それだけに、ゲームの時間と夢トークを連動させるためにキーワードをちりばめているのが特徴のようだ。

 「自分の授業では、キーワードとして『友達』『仲間』があって、その大切さを伝えようとしています。だから、自分が小学校のころの経験談を語ると、より一層、小学生の子どもたちには伝わりやすいので、そういうところを大事にして語っています」と式田さんは言う。

 現在は、サッカー強豪校として知られる船橋市立船橋高校、つまり式田さんの母校のサッカー部でコーチを務めるなど多忙な毎日だが、夢先生は絶対に辞められないという。

 「僕はサッカー部のコーチで、高校ではサッカー部の生徒にしか会えませんが、夢先生のときはサッカー部以外の子どもたちとも出会えるので、それが指導者としての勉強になるし、財産にもなります。実はプロサッカー選手になれなかったら、学校の先生になりたかった。結局、学校の先生にはなれなかったけれど、こうやって夢先生になることができて、もうひとつの夢をかなえられた場所だと思っています。だから、夢先生は辞められないんでしょうね(笑)。子どもたちに真剣にぶつかると、いつも新鮮な空気を感じられる。夢とはどういうものなのか、自分の経験を通して教える側のはずなのですが、むしろたくさんのエネルギーを子どもたちからもらっています」(式田さん)

 以下は夢先生である式田さんと、子どもたちのやり取りが記された夢シートの一部だ。

 小学生のときに、友達から無視されるというつらいいじめを経験し、それを救ってくれたのは、サッカー仲間でもあり、クラスメートだった友達の勇気だった。式田さんが子どもたちに伝えたかったのは、自分のつらい経験ではなく、強い気持ちを持った友達の勇気。そして、仲間を大事にすることで生まれるポジティブな力、ミラクルパワーだ。式田さんが伝えたかったことは、この夢トークを聞いた子どもたちに届いているのではないだろうか。

(取材・文/國尾一樹)

式田 高義 (しきだ たかよし)
式田 高義(しきだ たかよし) 千葉県出身。高校サッカーの名門・船橋市立船橋高校時代に全国高校サッカー選手権大会優勝を果たす。卒業後の1996年、ジェフユナイテッド市原(現 ジェフユナイテッド千葉)に加入し、MFとしてプレー。その後、中央学院大学を経て1999年にはアルビレックス新潟に移籍。2001年に現役を引退し、現在はジョカーレフットボールクラブ代表、船橋市立船橋高校サッカー部コーチとして活動する傍ら、JFAこころのプロジェクトスペシャルスタッフとして全国各地で「夢の教室」を実施している。