発達障害に向き合う

 細川さんは、趣味ではまった宝塚歌劇に関する仕事もするようになりました。「『ツレうつ』を出版した年、ある編集者が宝塚のファイルを持っていたので『興味がある』と話したら、観に行きましょうと誘われたんです」。東京の劇場でとりこになり、本拠地の兵庫県宝塚市まで日帰りで観に行くように。「昭和の世界と爽快感のある物語もいいし、春野寿美礼さんが大好きになりました」

 2011年には、家族で千葉県から宝塚市に引っ越しました。「ヅカを見始めて12年。一つの公演を3回は観て、5組あるので、毎月3回は劇場に行っていますね。元タカラジェンヌとのトークショーに呼ばれ、対談をするなど、お仕事にもつながっています」

 『ツレうつ』でブレークした細川さんは、途切れなく作品を出し、共著も含め著作は50冊ぐらいに。挿絵や雑誌などの仕事もあります。そんな売れっ子になっても、自分を認められず、生きづらさを感じ続けていたといいます。

 近年は自分を題材に、「当事者研究」をしています。細川さんは精神科医の水島広子さんと一緒に本を作る機会があり、水島さんとやり取りする中で自分を認める練習をしました。それまではネガティブに考えている自分に気づくたびに「ダメ、考えちゃ」と自分を否定していましたが、「ネガティブでもしょうがない」と受け止めるようになりました

 大きな気づきもあったそうです。「水島さんのワークショップに出るためにチェックリストをしたところ、自分が発達障害の一つである『自閉症スペクトラム』かもしれないということが分かりました。初めはショックでしたが、そのことにより、ずっと生きづらさを感じていたんだと納得。若いときに引きこもったり、人間関係につまずいたり。今も数字に弱いし、文章の意味を読み取れないことがあります。『そういう自分だから、他の人と同じようにしなくていいんだ』と、今年になってやっと思えるようになりました」

 現在、細川さんは生きづらさを和らげるヒントを、ツイッターで発信しています。「48歳の1年間は、その日の幸せを見つけて書きました。幸せって感じたことがなかったから毎日、何か探して描くように。半年したら自然と見つけられるようになったんです。49歳になった今は、『嫌なことがあった人に、親友だったらどんな言葉をかけるか』を想像して、イラストと言葉でツイート。ストレスを感じたとき、何が嫌だったかを書くと、客観視できてネガティブループに陥らずに済みます

 後編では、パパ主導の子育てや、細川さんのPTA活動について紹介します。

(取材・文/なかのかおり)

ほそかわ・てんてん 1969年生まれ。様々な職業を経て「セツ・モードセミナー」を卒業。1996年『ぶ~けDX』(集英社)で漫画家デビュー。2006年、夫のうつ病体験を描いたコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』を発表しベストセラーに。最新刊は精神科医・水島広子さんとの共著『やっぱり、それでいい。』(創元社)。