スポーツクラブ辞め母の介護

 20年以上勤めたクラブを、40歳のときに辞めました。群馬に住む母が、血液のがんで余命が少ないと知らされたからです。土日は都内から群馬に通い、母を病院に連れて行ったり、食べたいというお店にいったり。このために運転免許も取りました。

 仕事はフリーで何でもやりました。高齢者の施設の体操や、転倒予防教室、マシンを介護施設に導入するときの説明。ホットヨガの講師や、学校の先生も引き受けました。介護予防を指導する人のためのコースで教えたことも。

 2年間、通いで看病して母をみとった板橋さん。元上司に声をかけられて2007年、有料老人ホームを運営する会社に入りました。介護保険制度で介護予防を取り入れる際に、体操を指導する人が必要でした。

 老人ホームでは、今までの知識が通用しませんでした。体操に取り組んでいた3人のうち、2人がいなくなり自分だけに。「相談できる人がいないので、入居者や介護スタッフに聞くようになりました。こんなに曲がってしまっている体で歩けるのはなぜ?と聞いてみたのです」

元気な高齢者に秘訣を聞く

 90歳になっても元気な女性がいました。「朝、体操をやっているの?」と聞くと、「手をぐーぱー、膝を曲げ伸ばし、立ったり座ったりをゆっくり。これをすると気分がよくなるの」と言って、車いすをずらしてテーブルにつかまり、ブルブルしながらやってみせてくれました。

 「インストラクターとして見たら、ダメな動きをしています。でもご本人は、これが10回できるから、一人でトイレに行けるのよとニコニコされました」

 96歳の女性は、骨折しても復活していました。聞くと、「痛くても動かないとダメになるのよ」「夫の面倒を見ないといけなかったから」。そのおかげで動けていると言います。

 日常生活の中に、意識的に運動を取り入れて、なりたい自分に向けて楽しく続けている高齢者たち。板橋さんは、目標があり、「これをすると気分がよくなる」という意識が大事だと実感したそうです。

 後編は、現在の活動について紹介します。

(写真/小野さやか)