家族に応援してもらうために、仕事を持ち込む

社会貢献に没頭する友子さんの生き方には、現役医師の母・泰世さん(86)が大きく影響しています。「母は色覚異常とされた人たちに対する差別をなくす活動をしてきました。全国の教科書を取り寄せ、色刷り改正の仕事をしました。その後は医学部の募集要項、パイロットや警察官などに関する書類を取り寄せて分析し、学会で発表したり、行政に訴えたり、色覚検査を廃止させる運動をしました」と友子さん。他に、中途視覚障害者や弱視の子どもをサポートする活動も。敵がいても闘い続ける母の姿を、子どものころから見ていました。

 とても忙しい母。寂しい思いもあったそうです。クラスの中で、1人で夕飯を食べた経験があるのは自分だけでした。それでもお弁当は毎日、欠かさず持たせ、誕生会にはケーキを焼いてたくさん友達を呼んでくれた母。そんな母に倣って、友子さんも娘たちにお弁当を作り、誕生日にはケーキを焼き、一緒にデコレーションします。

 「母は仕事を家庭に持ち込んでいたので、私はよく理解できたし、味方になれました。山のような資料が家にあって、中学生のころからは原稿に意見を言い、相談に乗っていました。仕事を持ち込み、何が大変なのか、なぜ機嫌が悪いのか共有すれば家族のコミュニケーションになります。医師は責任が重く、時間が区切れる仕事ではありません。家族に応援してもらうために、仕事を持ち込むべきと思います」

女には3倍頑張る能力がある。ストレスはあるのが当たり前

現役医師の母は「女が仕事をして男性と同じように認められるには、5倍は働かないと」とよく言っていました。友子さんは「今の時代なら、3倍」と捉えます。「家事・育児・仕事と、女性は3倍も頑張る能力が与えられている。誤解を恐れず言えば、これらが同時にできるのは女性ならではなんですよ」

 さらに、「現実の把握と環境適応力、思いやる気持ちは女性のほうが優れていてやれてしまうと考えてみてください。ストレスは誰にでもあるので、ストレスと感じなければいい。私はやりたいことをやっているだけ。逆に、誰にも必要とされない自分は好きになれないんです」とアドバイスしています。

 娘たちは、友子さんが悩んで泣いているところも間近に見ていて、応援してくれます。成長した近年は、センターでボランティアをしたり、学校で介助犬普及のクラブを作ったり。「ママみたいな医師になりたい」と言われてうれしいそうです。