娘には本気で言い返してしまう

 子育てを通して、思うようにならない経験もしているといいます。「40歳で、やっと授かった娘。子どもに恵まれるのは幸せなことだから、笑顔で向き合いたいと思ってきました。現実はそうはいかなくて、手探りしながらの子育てです」

 ママの手は離れても、成長とともに反抗したり嘘をついたり、表現が達者になると怒ってしまうときもあります。牧野さんは、タレントの指導では感情的にならずに計算して叱っています。プロなのに、わが子には感情的になって本気で言い返してしまう。何をむきになっているんだろうと反省もありますが、真剣に叱るそうです。

 「育児の本を見ると、脅すのは駄目と書いてあります。恐怖心で言うことを聞かせるのはよくないと。でも、説明して分からないうちは危ないことは駄目だよと教えるために、厳しくするのも必要。分かってくれたら抱きしめてあげました。今は、話せば分かるようになり、ますます生意気にはなりましたが、まだ私が勝てます。親として、成長していく娘とどう付き合うかも、初めての経験で修行ですね

 実は、牧野さんは新しい家族の形を選び、幼稚園に通い始めた年に離婚しました。とはいっても、パパとおばあちゃんと牧野さんと3人で連携して育てています。パパはお弁当作りや幼稚園の送り迎えをするし、ラブジャンクスの仕事も一緒にして今まで通りだそうです。

 家族の支えを力にして、牧野さんの挑戦は続きます。ダウン症があっても才能が正当に評価されて、健常者と同じスタートラインに立てるように。社会に溶け込んで生活できるように

(取材・文・写真/なかのかおり)