起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなど、多くの壁を乗り越えてきたママ起業家や社長にインタビューする「私が壁を乗り越えたとき」。第15回は、子ども食堂に寺子屋要素が加わったKIDS’ HOME CAFETERIAを立ち上げた山田瑛理さんを紹介します。

 山田さんは、大手総合エンターテインメント会社で音楽制作や宣伝、教育事業に携わるなか、2度の出産を経験。2018年4月に、小学生を対象とした夜ごはんの提供と学習サポートをする「KIDS’ HOME CAFETERIA」を地元川崎市川崎区に立ち上げました。現在は、2児の子育てをしながら、仕事と両立しています。

 上編の「親になり、地元で起きた凶悪事件を無視できなかった」に続き、今回は起業に至る経緯や現在の取り組みについて紹介します。

新規事業に携わり、子どもの心を育てることの大切さを実感

 2015年4月に2度目の復職。その際に、新規事業となるエデュケーション事業部の立ち上げメンバーに立候補し、選ばれました。

 「自治体と協力して実施した『飯能グリーンカーニバル』という親子フェスの立ち上げや、みんなで集まって1つのものを作り上げる経験ができるミュージカル教育、自分の気持ちをアウトプットするプレゼンテーション教育に携わりました。仕事を通して、子どもの心を育むことの大切さ、教育の重要さを実感しました

山田 瑛理
KIDS' HOME CAFETERIA代表
川崎市川崎区生まれ。2児の母。大手総合エンターテインメント会社で音楽制作や宣伝、教育事業に関わる。わが子の成長とともに、地域の子どもたちに寄り添いたい、と思うようになり、2018年4月にKIDS' HOME CAFETERIAを立ち上げる。

「小1の壁」と地域のために何かしたいという思いから、起業

 一方、自身にも「小1の壁」が近づいてきて、どうしようかと焦ったといいます。

 「上の子がいよいよ年長になり、小学校生活を意識し始めたときに、夜をどうしよう、と思ったんです。川崎市の公営学童保育所『わくわくプラザ』は、最大19時までの預かりで、定時に帰ったとしてもお迎えの時間に間に合いません。夕食の提供もないので、帰ってきてから夕食の準備や片付けをすると本当にバタバタで、子どもとのコミュニケーションを取る時間がなくなりそうだなと。同じように困っているママはいっぱいいるだろうし、川崎のために何か活動をしたいという思いから、自分で解決しようと思いました

 2017年9月に退職、川崎市中1男子生徒殺人事件から約2年半が経過したころでした。

 「仕事が忙しかったこともあり、並行して新規ビジネスを考えることができなかったので、とりあえず何かをやろうと決めて、まずは退職。それから、今まで断片的に考えてきたことをまとめて形にする作業をしました」

 とくに誰かに相談するわけでもなく、一人で考え、決意したといいます。

 「やってみないと分からないから、まずはやってみよう。ダメならダメで、また新しいことをやってみればいい、と思ったんです。夫に『こんなことをしようと思っているんだけど、いい?』と聞いたら、『いいよ』と言うので『じゃあ、そうするね』という感じで。夫の母はバリバリ働いている方だったこともあり、私が働くことや決断を尊重してくれました」