早速、抗がん剤を経験した先輩の話を聞いて回りました。脱毛するけれど、治療が終われば必ず生えてくる。ベリーショートにして、かわいい帽子を用意しよう。乳房を再建したから温泉だって行けるし、と楽しみを見つけました。そんなとき、大事な患者友達が他界。「美容ジャーナリストとして伝える手段を持っている私が、たくさんの女性にがんについて伝えなければと強く思いました」

治療中も体調のいいときは趣味のバレーボールを

 1年間は抗がん剤と分子標的薬を使って治療し、その後はホルモン療法を続けました。抗がん剤による治療は6カ月。最初の3カ月はしびれの出る薬を毎週1回。その後、吐き気が続く薬を3週間に1回。抗がん剤の点滴が始まって4週間後ぐらいから脱毛が始まると分かっていたので、髪の毛が抜ける様子を淡々と観察しました。

 「帽子がかわいくて人に見せたくなり、化粧品の新製品発表やパーティーなど、人が集まる場所にも顔を出しました。知人が『私も検診に行く』と言ってくれて、オープンにしてよかったと思いました。中国へ取材旅行にも行きました」

 治療中も、体調がいいときは趣味のバレーボールを続けました。スエットの帽子をかぶって、練習や試合に参加。薬の副作用なのか、平衡感覚がなくなって思うように動けませんでしたが、体のリハビリや気分転換になったそうです。

がん患者でも元気になれるメイクを編み出す

 抗がん剤の副作用で体調が悪くなるだけでなく、髪の毛やまつ毛・眉毛、全身の毛が抜ける。手足がむくみ、顔はくすんで爪や指先も黒ずみます。山崎さんは、こうした体験を生かして、人と会うのも気が引けてしまう患者のために、きれいに見える工夫を編み出しました。

 帽子やウイッグの選び方、色付きの下地やチークを使って顔色良く仕上げる方法、爪の黒ずみを隠すカラーの使い方などを提案。「外見がきれいになるとうれしいし、元気が出る。心配している周りの人も喜んでくれます。昔なら『がん』と『キレイ』の組み合わせは違和感があった。私は心も胸も見た目も、きれいに治すことを心がけました。『キレイ』を心がけるのは、女性にとってすごいリハビリ効果があるんです

「メイクをした半分と、していない半分を見比べて下さい」(山崎さん提供)
「メイクをした半分と、していない半分を見比べて下さい」(山崎さん提供)