認定NPO法人「日本国際ボランティアセンター」(JVC)でスーダン事業を担当する小林麗子さん(44)は5歳の男の子のママ。海外出張の間は、パパと息子さんがお留守番。小林さん家族にとって、それほど特別なことではなくなりつつあるそうです。後編では小林さんの子育てと、現在の仕事について紹介します。

(上)小林麗子 ママになっても国際協力の仕事を続けたい
(下)「30回寝たら帰ってくるよ」夫に息子を任せ海外へ ←今回はココ

スーダンへ、パパと息子はお留守番

 JVCの小林麗子さんは今年1月半ばから1カ月、スーダンに出張していました。5歳の長男が生まれた後、1カ月ほど家を空けるのは3回目。「家族にはかなり免疫がついてきたように思います。 今回は、夫も急な出張が入り息子を同伴することになったり、大雪が降ったり、大変な日もあったみたいですが、無事でした」。そう話す小林さん。これまでのキャリアで海外慣れしているものの、幼い子を残しての出張はどんなものなのでしょうか。

 スーダンでは、2011年に現在の南スーダンとの国境に近い南コルドファン州で紛争が起きました。JVCは、避難民となった人々の支援をしています。「2017年1月に、初めてスーダンに行きました。息子を残して初めての海外出張です。たまたま担当者の交代があり、現地に日本人の人手が足りなくなるので手をあげました」

「30回寝たら帰ってくるよ」

 今までの経験から、現場に行かないと実感がわかないと知っていました。「雲をつかむような気持ちで仕事をするよりも、海外の支援の現場に行きたいと家族にも言っていました。スーダン出張を夫に話すと、いいんじゃないと言ってくれました」

 小林さんが出張している1カ月の間、長男の送り迎えはパパがしました。 「保育園は延長すれば夜8時過ぎまで利用できて、夕食も出ます。時々は義理の母が来てくれて。 息子は変わった様子もなく、乗り切れました」

 出かける前、「ママはスーダンに行くんだよ。30回、寝たら帰ってくるよ。パパと仲良くしてね」と長男に言いきかせました。最初は「ママ、行っちゃダメ」と言っていたけれど、笑顔で送り出してくれたそうです。

 心配はありました。「息子は肌が弱く、風邪の症状や細かい体調は、母親である自分が一番知っていると思ったからです。もし変化があっても、私しか気づけないと」。実際に任せてみると、夫のほうが丁寧だとわかりました。「食事も作り置きしていたみたい。私のつわりがひどかったときから料理をするようになったので、良かったです。掃除もやってくれました」と小林さん。

 スーダンにいる間、家族とは週1回、休みの日にスカイプで話しただけ。長男と「何をしてるの」「何を食べたの」と簡単な会話をして、そのほかに夫が写真やメールでまめに報告してくれました。 「滞在していた首都のハルツームは、そんなに危険ではありません。事前に夫がスーダンについてネットで調べて、大丈夫なの?と言ってきました。それ以上は聞かれませんでしたが、心配しても言わなかったのかもしれませんね」

実家近くの消防署で。息子は電車も車も大好き(2017年夏)
実家近くの消防署で。息子は電車も車も大好き(2017年夏)

こばやし・れいこ 1973年生まれ。日本国際ボランティアセンターのスーダン事業担当。イギリス留学で人種・民族問題を学び、いくつかの国際協力の団体で働いた。2015年から現職。39歳で出産。時折、長男と夫に留守番を頼み、海外の現場に出張している。