久しぶりに仕事に没頭、読書もできた

 そして家族と離れてスーダンに行ってみたら、久しぶりに仕事に没頭する感覚を取り戻したそうです。本を持参して読むこともできました。

 「現地のことを何も知らなかったと思い知らされ、出張には大きな収穫がありました。国内避難民が生まれて緊急に食料や衣料品の支援をし、時間が経って生活の再建にシフトしました。生計を向上させるために菜園づくりを支援し、野菜は現地の人たちが食べるほか、売って現金収入につながっています」

 これまでに避難民の住居やトイレ建設の支援もしました。近年は、井戸などの給水施設はある程度、行き渡りました。「でも新たな問題がありました。出生登録がない子や、手続きをしていない子は学校に行けません。 村から逃げてきたお母さんたちの識字率は低く、学費の問題もあります。そこで母親向けの識字教室を開き、多くの子どもが学校に通えるように校舎の増設なども進めています」

 こうした支援には、小林さんの子育て経験からの視点も生かされるでしょう。「スーダンのすべてを見られたわけではありませんが、彼らがたくましく生きている姿に力づけられました。大変そうに見えても、この子たちにとっては普通の生活なんだなと。また行きたいと思いました」

パレスチナにも単身で出張

 小林さんはスーダンを訪ねた後も、支援の現場に行くチャンスがありました。2017年の8月後半から1ヵ月、混乱の続くパレスチナに出張しました。

 「息子に『また行っていい?』と言ったら、最初は『嫌だな』と言われて。最終的には、夫と快く送り出してくれました。保育園の先生にも『また留守にするので』とお願いして、変わりなかったです。帰ってきてしばらくは、ママにべったりでしたけど」

 パレスチナは小林さんの担当ではありませんが、現地に行ってみて現状を理解できました。「スーダンとまた違う問題を抱えています。滞在中は、想像もしなかったことが起きたり慌ただしい日々でした。日本ではさっと済むことが、半日かかるんです」

 筆者自身も短期間、娘を連れてドイツや北海道に取材に行ったことがあります。小林さんは、子連れの出張は考えないのでしょうか。「私たちが支援している国や地域は、子どもは衛生面で心配されるし、なかなか難しいです。現地に入るのも一苦労。子どもを連れて入れない地域もあるので」とのことでした。

スーダン南コルドファン州の小学校視察(2018年2月)
スーダン南コルドファン州の小学校視察(2018年2月)