厳しさを乗り越えて見える景色もある

 ピアノの教育についてはどうでしょうか。4歳からピアノを始め、祖母と母がついて特訓した仲道さん。師事した先生には3カ月ごとに課題曲を出され、舞台で試験がありました。「山があったら登りたい性格。やる気になり、長い時間練習ができました。不器用で時間がかかったから、小5のとき、コンクールの前は8時間の練習をしました」

 楽器をやっていくのに、幼い時期は多かれ少なかれ大人のサポートが必要といいます。「厳しいことを乗り越えるから見られる景色はありますよね。楽しいだけでは見えてこないものはある。その子が音楽の持つ美しさ、芸術としての本質に近づけるサポートや教育があれば、音楽に親しんでよかったと思えるのでは」

 ピアノを習う子は多いですが、「向いていない」「本人が好きじゃないから」と親がやめさせてしまうケースも少なくありません。「本当は好きになるかもしれない、面白さに気づけていないだけかもしれない。年代によって見つけられることは違うので、早い時期に好きじゃないと言い切るのはもったいないですよ。ピアノを続ければよかった、やっておけばよかったという大人の方はいっぱいいます。定年してから始める人も多いです。自分で音が出せるってすてき。興味ある楽器をやってみて、時には親が励まし続けてみてください」

妊娠中も演奏活動を続けた
妊娠中も演奏活動を続けた

これから10年のスケジュール

 昨年、デビュー30周年を迎えて今年から10年間の演奏プログラムも決まっています。最後に、子育ての大変な時期を乗り越えてきた秘訣や、これからのことを聞きました。

 「子育てや介護、仕事にしたって、私より大変な人はたくさんいます。常にドタバタで、乗り越えた感じはありません。私はどうなるんだろうと悩んでも、過去を思っても仕方がないので、とりあえずできることをしていくしかありません」

 演奏についても「ああすればよかった」とくよくよして落ち込むそうですが、なんとか次は頑張ろう、に持っていく。悲しむだけでなく、なぜうまくいかなかったか、どうやって改善できるか考えます。分からないこともありますが、分かることからトライします。

 「そうしていくうちに経験値が増え、気づけばデビュー30年。死ぬまでピアノを弾きたいです。挑戦し続けないと次の頂が見えてこないから。上に向かう途中に、谷もあるかもしれません。現在進行形で、とにかく試して試して試して、少しでもよくありたいです

ストルツマンとお嬢さん(撮影:Akira KINOSHITA)
ストルツマンとお嬢さん(撮影:Akira KINOSHITA)

(取材・文/なかのかおり)

<関連サイト>
仲道さんホームページ http://www.ikuyo-nakamichi.com/